その1年ほど後、縁があって、保護された茶トラの子猫を迎えた。女の子だった。姫と名付けた。先輩2にゃんはしゃあしゃあ言ったが、姫は我関せず。動じる様子を見せなかった。
「虎はすぐに新入りと察したようでした。私たちのほうを見て『仲良くしたほうがいいんだよね?』と言いたげな顔。ただ、景が完全にシャーシャーシャーになっていて、『ボクはいいけど、景がシャアって言っているからな』という雰囲気が漂っていました」
3日間、景はシャーと言い続けた。3日目の夜、普段は入らない洗面所、洗濯機の上に陣取って3時間ほど眠った。戻ってきた瞬間から心を開き、小さな姫のお世話を始めたという。
「たぶん、虎から『次、きみの番ね』って言われたんだと思います」
虎が景にしてくれたように、景は姫の面倒を見た。虎ほど完璧にはいかず、蝦名さん曰く「少々、雑」だったが、行き届かないところは虎が景の見ていないところでフォローした。虎、本当にできた猫なのだ。
いまでは姫はすっかり大人になり、2にゃんが一緒に眠ることは少なくなった。お世話時代の名残は、姫のお昼寝明けに景がグルーミングするところだろうか。グルーミングされる姫はちょっとうるさそう。姫は、“おじさん”が苦手で、若く物静かなイケメンが好きな女子に成長したのだという。
蝦名さんはそんな個性豊かな猫たちの一瞬一瞬を、写真に収めている。
パートナーが虎と会話している光景も、すっかり日常の一コマになった。いまでは、来客があれば、「猫がどれだけ魅力的で暮らしやすいか」を熱心に説くようになった。2月22日猫の日は、そんなパートナーのお誕生日。
蝦名さんが今日猫たちに願うことは、「とにかく、みんな元気でしあわせに」。
今日は猫の日。皆さんと皆さんの猫も、今日はちょっと幸せでありますように。
※AERAオンライン限定記事