あらゆる世界を経験し、広い視野をもって母校に戻ったのは16年。以来、講師として勤務している。高橋医師らしい活動は、このころから始まった。18年から日本脊椎脊髄病学会の国際委員会に所属し、国際交流を通じた学びに力を入れていく。

 「国際委員会では、約4千人いる学会員のうち、応募制で毎年10人ほどがアジアの連携病院や大学に行くプログラムを運営しています。近隣諸国と留学し合ったり、学術的な研究の交流をしたりして、お互いに足らないものを学ぶんです。はじめは、私も学びに行っていました。日本であまりおこなわれていない手術などは勉強になって、臨床に役立てています。現在は講師として参加しています」

難度が高く名誉である各学会の奨励賞を受賞

 20年には、専門にしている骨粗鬆症(こつそしょうしょう)による圧迫骨折の研究の質や研究結果による影響などが評価され、第32回日本脊椎脊髄病学会の奨励賞を受賞した。

 「患者さんが多い病気なので、どうにかしたい気持ちで研究を続けていました。骨にセメントを入れる椎体形成術は年間1万件以上おこなわれていますが、もともと骨がもろいので、骨が負けてつぶれてしまうケースが報告されています。骨がつぶれている程度による危険予測についてまとめました」

 さらに同年、日本整形外科学会の奨励賞も受賞。社会的問題になっている医療費について、イギリスでの手技による対価や医療認可制度、コスト意識などを説いた論文が認められたのだ。

 「どちらも運良く受賞することができました。当大学の中村博亮教授のご指導や共に研究している先生方に引っ張っていただいたことなど、人とのつながりのおかげです」

 今後も、解明されていない部分が多い骨粗鬆症の研究を深め、患者が手術をしなくても済むような一手や、適切な手術のためのアルゴリズムを開発するのが目標だ。高橋医師が見据える未来に、注目が集まっている。

(取材・文/小久保よしの)

※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2024』より

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