「ちょっと師匠に怒られちゃったので。でもそこから、けっこう気合が入ってがんばっています。いま清麗戦の予選でベスト8に残っていて、次に加藤さん(桃子女流四段)と当たります。加藤さんは強いですし、苦手です。研究タイプで、(序盤の甘い手を)すべてとがめられてしまうというか。加藤さんにはアマチュア時代から3連敗してるんで、そろそろ勝ちたいです」
トップに立つ福間香奈と西山朋佳(いずれも女流四冠)にはまだ当たっていない。
「指してみたいですね。いまの自分で、どれぐらいまで戦えるのか」
2023年11月23日。磯谷のデビュー記念祝賀パーティーが東京でおこなわれた。関西在住の山崎師匠も、前日収録のリモートインタビューでメッセージを寄せてくれた。
「弟子になったときに『将棋しかない』っていう言葉が印象的な子だったんですけど」
師匠の目には、かつて奨励会に在籍していた頃の磯谷は、将棋がつらそうに見えた。しかしいまは楽しそうだ。現在の磯谷ほど、自分から率先して多くの研究会に顔を出し、多くの詰将棋を解いている女流棋士は、そうはいない。
「ちゃんとやってるんだなというのは感じられて、ほっとしています」
厳しかった師匠からの、そんな心温まるビデオメッセージも終わった。楽しいパーティーもそろそろお開き。そう思われたところでサプライズが起きた。師匠の山崎が会場に現れたのだ。思わぬことに驚き、涙ぐむ磯谷に、山崎は笑って花束を渡した。(構成/ライター・松本博文)
※AERA 2024年2月26日号