やってくれたんです、岡選手が。桃野選手の負けん気に引っ張られ、負けるもんかと全身全霊、剥き出しで、我武者羅に、正々堂々と闘い抜いていました。
若い頃、私にはなんでも斜に構えて諦める癖がありました。当時はそれが唯一の正解だと思っていたけれど、振り返ると、まっすぐ挑戦することは幾多の人生ハードルを越えるのに必要な経験だったはず。やらない理由を探してばかりだった時代があることを、今更ながら悔やみます。
岡選手は諦めませんでした。とことん練習した自信が体に漲っていました。試合には負けてしまったけれど、過去の自分には勝っていた。
先輩の橋本選手は最後に「後輩の存在が私を強くしてくれる」と言い、「練習と努力は絶対に裏切らない」とも言いました。尊敬します。今の時代、それを言い切れる人っていないもの。素晴らしい先輩のもとに、素晴らしい後輩は育つのだな。
※AERA 2024年2月26日号