作家・画家の大宮エリーさんの連載「東大ふたり同窓会」。東大卒を隠して生きてきたという大宮さんが、同窓生と語り合い、東大ってなんぼのもんかと考えます。作家の小川哲さんは、1年留年して見えてきたことがあると言います。
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大宮:大学には結構行ってましたか。
小川:学部生のころから、そんなに行ってなかったですね。大学院は授業がないんで、授業のために学校に行くことはあんまりなかったですし。図書館はよく使ってましたけど。
大宮:やっぱり管理されるのが嫌だから授業が嫌いみたいな感じですか。
小川:授業は昔から嫌いでしたね。基本的に授業って、参加してる人の知識とか知りたいこととかがバラバラじゃないですか。
大宮:うんうん。
小川:だから、自分が本当に興味を持っていたり、知りたかったりする内容を1コマ90分でちゃんと得られるかっていうと微妙な授業が多くて。
大宮:なるほど。
小川:本は興味ないところは飛ばせばいいし、面白かったら、その人の別の本や関連する書籍を読んだりとかして、自分のペースで学習ができるんで、授業は可能なら出たくなかったですね。あと、人が多い場所が好きじゃなくて。
大宮:じゃあ、なんで大学に行こうって思ったんですか。
小川:当時の僕は、たぶん勉強が得意だったから行くっていう感覚でしたね。どうせ頑張るなら一番難しい学校に行こうぐらいの。
大宮:なるほど。授業が嫌いだし、人がいっぱいいるとこも嫌いなのに、火の中に虫が飛んでくみたいな(笑)。
小川:親からはね、「大学なんて、もう人生の夏休みだから」って言われてたんで。それに、東大選んだ唯一の理由は、「進振り」のシステムですよね。自分がどういう勉強をしたいか、何学部に進むかとかを2年後に決めていいし、理系で入っても文系の学問を研究できるっていうのは、当時、受験生の僕にとってすごく魅力的でしたね。18歳でやりたいことなんてわからないんで。
大宮:実際に理Iで入学して、文転してますもんね。