筑波大学病院 乳腺甲状腺外科病院教授 坂東裕子医師 写真/片山菜緒子
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 医師もひとりの人。なぜ医の道を選び、どう修練を積み、今何を目指しているのか。人それぞれ経験や思いは異なる。しかし、時間に限りがある診療の現場では、医師の人となりや胸の内を詳しく聞くことは難しい。そこで週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2024』では、最前線で活躍する注目の外科医6人をインタビューした。本記事では乳がん手術の注目外科医、筑波大学病院 乳腺甲状腺外科病院教授 坂東裕子医師を紹介する。

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 筑波大学病院は、乳がん手術332例のうち再建術84例(2022年)と、再建の比率が高いのが特徴だ。この数字は10年に開設した「乳房再建外来」が支えている。乳腺甲状腺外科病院教授の坂東裕子医師は、同外来と術後の後遺症に対応するリンパ浮腫外来の新設に尽力してきた。

 「乳がんの治療は手術で胸を失う、副作用がつらいなど『負の面』が多く、患者さんが治療の結果をプラスと実感できる面が少ないものです。確固たるポリシーというとおこがましいですが、患者さんに寄り添い、よりよいコミュニケーションをとることを大切にしています」

 こういった姿勢は患者に評価され、乳がん患者会「あけぼの会」の「患者が選ぶ Doctor of the Year 2010」を受賞している。

 坂東医師の父も医師で、日本の乳房再建のパイオニアだ。高校生のころ、学会のスライド作りなどを手伝うなかで、医師の仕事のやりがいに触れた。

 「特に印象深かったのが、乳房再建をした患者さんのアンケートです。集計を手伝ったときに、患者さんのコメントに触れ、父はすごく喜ばれる仕事をしているのだなと感じました」

 自然と医学部に進み、当初は消化器外科医を目指していた。臨床研修は、父親が在籍していた都立駒込病院で受けた。

 「大学病院の臨床実習ではできない手術の経験が、ここならできると思いました。そのなかで、戸井雅和先生(現・駒込病院長)が乳腺疾患の治療の興味深さを示してくださいました」

医師の価値観を押し付けず、患者の気持ちを理解する

 男性医師の多い外科系のなかで女性医師の存在は、乳腺外科の患者が安心感を抱ける存在なのだと実感し、乳腺外科医を目指すことにした。臨床実習5年目には、東京医科歯科大学大学院に入学し、その後ドイツへ留学。帰国後、博士号を取得し、母校の筑波大学へ赴任した。

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