かつて頭の回転の速い人を指して「人間コンピュータ」と言っていました。コンピュータは同時に多くのことを並列的に処理する力に長けているので、その特長になぞらえてこのような言い方をしていました。並列処理ができると、思考の幅が広がって、多くのことに気を配りながら最良の方法を素早く選択してこなすことができます。うらやましいかぎりです。

 最近活躍している並列処理の達人としてすぐに思い浮かぶのは、棋士の藤井聡太さんです。棋士は先の様々な可能性を頭の中で並列的に処理しながら次の一手を決めていると聞きますが、藤井さんはその力に長けているから段違いの強さを発揮できるのでしょう。並列処理と言っても、すべてのことを同時に扱っているのではなく、取捨選択をうまく行いながらその場における最適解を素早く導き出していると思われます。その点も含めて彼は並列処理の達人ではないかと思います。

 加齢はこの並列処理の能力を著しく低下させるものです。私の場合、歳を取ってからは同時に多くのことを行おうとすると、やりっぱなし、忘れ物などが増えました。このメカニズムについて考えてみたところ、取り組んでいたある一つのことが完了しないうちに別のことに意識が行くと、元のもののことを忘れて意識が戻らなくなるからだと思いました。

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意識して逆のことをすれば……