それにしても衝撃だったのは、男のアカウントに2000人以上のフォロワーがいたことだ。食べ物に精子を混入する画像を公開してからフォロワーが一気に増えたことも確認されている。つまりはこれ、世界でただ一人が思いつくレベルの世にも稀な犯罪ではなく、同じような感覚を持つような鬼畜仲間(としか表現しようがないのですが……)がいくらでもいるということである。彼らにはきっと性虐待とかヘイトクライムの意識はないだろう。彼らの投稿を見ていると、女性が嫌がる行為をすればするほど娯楽の価値があがるようである。女性が嫌がることが娯楽になる社会で、この社会を生きる女性の安全が徹底的に脅かされているのだ。
冒頭のセリフは、映画に登場する娼館の女主人のものだ。映画「哀れなるものたち」では、娼館で働くことになった主人公が、女主人にこう提案する。
「女性が(男性客を)選ぶのはどうでしょう? そうしたら男性は、女性がセックスの間中、恐怖に打ちひしがれているのではないかと不安にならずにすむでしょう? 女性が楽しんでいると思えるでしょう?」
それに対する答えが、「それじゃ金にならない」というものなのである。
これを聞いて、私は、長年よくわからなかったことがわかったような気分になったのだ。遅すぎたかもしれないが、わかった。
長年私は、「男性は勘違いしている」のだと思っていた。だからこそ、口を酸っぱくして言ってきたつもりだ。「AVでやっていることをマネするな!」と。顔に精子をかけても女性は喜ばないよ、精子を飲むのが楽しみなわけがないんだよ、乱暴にされるのが好きなわけがないでしょ、無理やり大きなバイブを入れられたら怖いだけだよね、知らない人にいきなりホテル行こうって声かけられるのは怖すぎることだよ……とかとか。女性が嫌がることなんてしたくないよね? 喜んでもらいたいんでしょう? だったらAVじゃなく、リアルな女性の声を聞いたほうがいいよ! と言い続けてきたのだ。