米国のバイデン大統領
米国のバイデン大統領

 これは、個人が殺傷力の高い武器を所有する権利があるという考え方と瓜二つではないか。その権利を認める代償として、毎日多くの犠牲者が出ても仕方ないとする米国の考え方は、自衛権の先にある戦争で、多大な犠牲者が出ても仕方ないという考え方につながる。さらに、銃規制にはライフル協会が障害となり、軍拡と戦争の抑止には、武器産業という巨大な利権産業が立ちはだかるという構造も良く似ている。

 私は、平和主義を至高の価値と掲げる日本が、武器の呪縛から逃れられない米国と「価値観を共有する」ことはあり得ないと考える。共有するのは、「民主主義」「法の支配」「自由」などだというが、「平和」や「人の命」について全く異なる考え方を持った国と安易に「価値観を共有する」と言ってはならない。外交上の「リップサービス」ならまだしも、自民党は、「心の底から」米国と一心同体の考え方のように見える。それは、極めて危険な思想だ。

 他国と共有すべき価値観とは、「平和」と「国民、さらには世界市民の幸福最優先」ではないのか。幸福度ランキング上位の北欧諸国などとはそうした価値観を共有できるだろうが、米国はそうした価値観を持つとは到底思えない。皆さんはどうお考えだろうか。

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。自身が企画プロデューサーを務めた映画『妖怪の孫』の原案『分断と凋落の日本』(講談社)が4月発売予定


週刊朝日  2023年4月14日号

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古賀茂明

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古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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