(撮影/上田泰世・写真映像部)

 大きくなるにつれてマンガやライトノベルをたくさん読むようになり、文学や評論を読んでほしいと思っていた武田さんは気をもむようになった。そして、高校や大学で海外留学をするよう勧めているにもかかわらず、関心を持とうとしない長男を心配するようになった。

「僕自身は5人兄弟の長男ということもあり、留学したいと親に言い出せなかった。現役で大学に入り、卒業と同時に就職という道を歩んできたので、自分の子どもには、という思いがあったんです」

目標を実現させた長男

 でも、そんな思いは響かなかった。

「どうして留学しようと思わないのか、全く理解できなかったんです。将来を案じる一心で、これからの国際社会で求められる語学力やコミュニケーションスキルを磨くべきなんじゃないかと、強く迫ったこともありました」

 自身がニュース報道に携わっているだけに、子どもたちにも社会的な課題にきちんと関心を持ってほしかった。若くして起業するようなZ世代の若者のイメージと比べてしまい、歯がゆさを感じたりすることもあった。

 子どもは親のコピーではないので、親の思い通りにはならなくて当たり前。

 そう頭ではわかっていても、いざ直面すると苦しかった。

「息子には息子の大事な世界があり、大切にする自由があるわけです。親としての成長を教えてくれたように感じています」

 そして出版業界に絞って就職活動した長男は今、出版社に勤め、大好きな活字の世界で働いている。

 小さいころの読み聞かせが今の長男の人生につながっているとしたら、「こんなうれしいことはない」と武田さん。仕事柄、面白い本を薦めてくれることも多く、幼いときのように本を通じた親子のやり取りが今も続いている。

>>【後編:NHK退職の報告に「まじ?」 武田真一アナが「なめるように可愛がって」きた息子たちに見せた姿】に続く

(AERA dot.編集部・市川綾子)

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