とあるご縁で「自画像」の依頼を受け習作中。これも自分を見つめる良い機会デス(写真:本人提供)

 でも本当にそれはコスパ最高だったんだろうか。早い段階で逮捕され、取り調べや裁判で延々と自分のことを述べ他者の言うことを聞き、結果として罪を償うというのは避けるべき道だったのか。それを避けることに成功したことは、人生という観点から見てどうだったのだろう。

 自分のことで言うならば、これまで生きてきて人を傷つけ、裏切り、利用してきたことは数知れず。その時点ではそうと気づかなかった。いやうっすら気づいてはいたが「自分なりの正義」のためにはやむなしと思っていた。でもそんなものは単なる言い訳ということが今になって分かる。で、分かって良かったと思うのである。

 なぜって、やってしまったことは消せないが、残りの人生は少しでもそれを償う生き方をしたいと思うのだ。そのことが自分が生きる大きな動機となっているのである。

AERA 2024年2月12日号

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