芦原妃名子さんの『セクシー田中さん』(撮影/写真映像部・和仁貢介)

 人気漫画『セクシー田中さん』の作者である芦原妃名子さん(50)の訃報から1週間が過ぎた。亡くなる数日前のSNSの投稿内容から、芦原さんは同作のテレビドラマの脚本をめぐるトラブルに悩んでいたとみられている。『ホットマン』などを代表作にもつ漫画家・きたがわ翔さん(56)も、映像化された自身の作品に“違和感”を覚えたことがあるというが、なぜ原作漫画の“改変”は後を絶たないのか。きたがわさんや現役の漫画編集者に取材し、実態を探った。

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「僕は、芦原さんが描いた『砂時計』のファンでした。人物描写が繊細ですごく才能のある作家さんだったのに。悲しみしかないです。同じ漫画家として、僕は芦原さんの味方ですが、今回のことは非常にセンシティブな出来事なので、なるべく感情的にならずにお話しできたらと思います」

 取材に応じてくれたのは、13歳でデビューして以来40年以上のキャリアをもつ漫画家・きたがわ翔さん(56)。自身の作品では、『19〈NINETEEN〉』と『B.B.フィッシュ』がアニメ化、『ホットマン』がドラマ化されている。

 芦原さんが1月末にSNSで説明した内容を読む限り、『セクシー田中さん』のドラマ化にあたっては「必ず漫画に忠実に」描くことが条件になっていたが、それが守られない事態が度々発生していたと思われる。その結果、芦原さんは脚本の加筆修正を繰り返し、ラスト2話にいたっては一から脚本を書くことになったという。

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大谷百合絵

大谷百合絵

1995年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。朝日新聞水戸総局で記者のキャリアをスタートした後、「週刊朝日」や「AERA dot.」編集部へ。“雑食系”記者として、身のまわりの「なぜ?」を追いかける。AERA dot.ポッドキャストのMC担当。

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「なぜこんな行動を?」という矛盾