ドラマ「セクシー田中さん」で主演を務めた木南晴夏

映像化のメリットは小さくなった

 芦原さんは最終的に、自らの手で脚本を書くという異例の手段に出た。芦原さんがそこまで追い込まれた理由については、「連載が続いている最中にドラマ化されたことが大きいでしょう」と、きたがわさんは推測する。

「作者は普通、物語の前半に伏線をいくつも仕込んで、ラストで回収するように構成を練ります。でもドラマがそれとは違う方向に暴走したら、『ドラマはドラマ』と完全に割り切れる作者でない限り、原作も影響されて伏線を回収できなくなるんですよ。僕も芦原さんと同じ状況だったら、『あ、ちょっとやばいかも』って焦ったと思います」

 当初の予定通り漫画を描けなくなったり、トラブルに発展したりと、映像化を許諾することには一定のリスクがある一方、漫画家にとって、そのメリットは年々小さくなっている。

 かつては、アニメ化やドラマ化を果たした作品の単行本は“大人買い”され、飛ぶように売れた。しかし、漫画喫茶や読み放題アプリの登場により、「コミックスを買わない時代」が訪れたことで、漫画家に還元されづらくなったのだ。

「『映像化は気が進まないけど、担当編集者が勧めるから……』と渋々引き受ける作家も一定数いると思います。やっぱり編集さんはサラリーマンである以上ビジネスの視点も持たなきゃいけないから、少しでも単行本や雑誌が売れれば、という気持ちは絶対あるでしょう」(きたがわさん)

 都内の出版社で働く漫画編集者・Aさん(40代男性)に話を聞くと、きたがわさんの言うとおり、「担当する作家さんに映像化の話が来たら、絶対勧める」と断言した。

 アニメやドラマになれば、広告費をかけずとも大々的に宣伝できるし、以前ほどではなくとも、コミックスの売り上げふくめ一定のリターンが見込めるからだ。

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