
「そこで打ったヒットは、自身トップ3に入るぐらい、とても嬉しかった。内角高めのストレートを詰まりながらセンター前に持っていきました」
そのときを思い出した表情は、とびきりの笑顔だった。野球をプレーすることが楽しそうで「(タニシゲをもじって)楽しげ」と呼ばれるゆえんである。
「捕手として受けた投手ベスト3をよく聞かれますが、僕が投手を選ぶ基準は左右別、球種別です」
その視点からすると、谷繁が選ぶのは、「最高のフォークボーラーは佐々木主浩さん(横浜)、右投手のスライダーは斎藤隆さん(横浜)、右投手のカットボールは川上憲伸(中日)、右投手のシュートは盛田幸妃さん(横浜)、左投手のストレートはチェン・ウェイン(中日)、左投手のスライダーとストレートは岩瀬仁紀(中日)」だ。
大打者・落合博満に対して「内角厳しめシュートの連投」
落合博満の中日監督時代は、監督と主力選手という間柄だったが、現役時代に選手同士として対戦もしている。当時、「大洋、横浜」の谷繁と「1989~93年中日」「94~96年巨人」の落合だ。
「落合さんのどこが凄いかといえば、やはりバットコントロールだと思います。スイングスピードはそんなに速く感じませんが、軽く振った打球がライトにヒューンと伸びていきました」
落合が苦手だったのは、体にぶつかる危険性があった盛田幸妃(大洋)のシュート。「91、92年ごろ、落合さんは打席に入るとき、ひとこと必ず『わかっているな』と釘を刺しました」