共和党の米大統領候補で前大統領ドナルド・トランプ氏の快進撃が止まらない。年初の2回の重要な予備選でライバルに圧勝し、同党の指名候補になるのは確実とされる。AERA 2024年2月12日号より。
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「日本には北朝鮮からミサイルが飛んできて、怖い思いをしているだろう。家族は無事かい?」
と、白人で白髪頭のジム・ザッカ氏が声をかけてきた。東部ニューハンプシャー州マンチェスター郊外にあるトランプ選対本部でボランティアをしている。しかし、彼は車で4時間かかるニューヨーク州の住民だ。
「でも、トランプが大統領に再選したら、世界はもっと安全になる。一緒に頑張ろう」
と電話番号とメールアドレスを教えてくれた。
1月20日午前10時(米東部時間)。外は零下10度というのに、選対本部に笑顔を浮かべた人々が続々と集まってくる。ニューヨーク州選出下院議員でトランプ派急先鋒のエリーズ・ステファニク氏(39)が、支援に訪れるためだ。小さな事務所は100人ほどのボランティアと支持者であふれ、汗ばむほどの熱気だ。「TRUMP」と書かれた毛糸のマフラーや「MAGA(メイク・アメリカ・グレート・アゲイン)」の赤いキャップ、そして興奮した顔、顔、顔。
トランプの国家
小柄なステファニク氏は到着し、いきなりこう演説を始めた。
「この選挙は、私たちの人生で最も重要なものです。11月(の投開票日)にバイデン大統領を敗北に追い込むのです。あなた方のようなアメリカを支える人々、アメリカ・ファーストの人々、これこそが私たちの、トランプの国家なんです!」
他州の議員がなぜそこにいるのか? 他の共和党候補を非難するのではなく、夏以降の本選挙になってからのライバル、バイデン氏の話をなぜ1月にしているのか? その謎は、同日の晩にスポーツアリーナで開かれたトランプ氏の選挙集会で明らかになった。
「バイデンは、民主主義を攻撃している」
ステージの後ろの大画面に映されたパワーポイントのスライドに、集まった約2500人の支持者がブーイングをぶつける。