副大統領狙いと言われるステファニク下院議員(撮影/津山恵子)

 トランプ氏は演説の前半で、南部サウスカロライナ州のヘンリー・マクマスター知事以下、同州司法長官、同州議会下院議長などの面々をステージに呼んで紹介し、「彼らに(協力を)懇願しているんだ」と持ち上げた。同州では2月24日、共和党予備選挙が開かれるが、トランプ氏を追い上げようとしている元国連大使、ニッキー・ヘイリー氏は同州知事だった。彼女の後継知事を味方につけて、ヘイリー氏にトドメを刺す狙いだ。

 トランプ氏は1月23日、ニューハンプシャー州予備選挙でヘイリー氏に楽勝し、本来なら夏に決まるはずの「指名候補」に、早くも1月中に王手をかけたと米メディアが一斉に報じた。その晩の勝利集会に、下院議員で別のトランプ派急先鋒のマージョリー・テイラー・グリーン氏(49)の姿もあった。

「バンドワゴン」

 米国では、こうした現象を「バンドワゴン」と呼ぶ。「勝ち馬に乗る」という意味で、人気のバンドのワゴンが地方を通ると、我こそはと思うミュージシャンがワゴンに飛び乗ることにかけている。勝つと分かれば、他州であっても駆けつけ、支援の演説を行い、支持者をひき付ける。ステファニク議員もグリーン議員も、早くもトランプ氏が当選した場合の閣僚、あわよくば副大統領指名を狙って、極寒のニューハンプシャー州に駆けつけたわけだ。トランプ氏はすでに「勝ち馬」で、来年1月以降のホワイトハウス「閣僚人事」のために彼らは動いている。

 それほど、共和党内でトランプ氏は強い。(ジャーナリスト・津山恵子=ニューヨーク)

AERA 2024年2月12日号より抜粋