アスリートがこだわるアイテムといえば、ウェアやシューズなどが思い浮かぶが、最近はその限りではない。フィギュアスケーターからプロ野球選手までがこだわり、時に数十万円もかけることがあるアイテム……それがイヤホンだ。
都内に3店舗を構えるイヤホン・ヘッドホン専門店「e☆イヤホン」の秋葉原店には、あの五輪メダリストが度々訪れているという。
「羽生結弦さんは、よくフラッとこちらにいらっしゃるんです、本当に気軽な感じで。よくイヤホンを購入されるんですが、度々いらっしゃるので、もう50~60個くらいはお持ちなんじゃないでしょうか」
こう話すのはe☆イヤホンを経営する「タイムマシン」の社長広報室の松田信行さんだ。
実は羽生選手のほかにも、同じくフィギュアスケーターの無良崇人選手、さらにはプロ野球選手の巨人・坂本勇人選手や楽天・松井稼頭央選手もこちらでイヤホンを買い求めることがあるという。
この店舗がアスリートをそこまで魅了する理由は、なんと言ってもその種類の多彩さにある。同店には2000種類以上のイヤホンが取り揃えられており、価格帯も数千円~数十万円と幅広い。そしてこの店舗の特徴は、その全てを試聴することができるということだ。
取材に訪れた日は平日だったにもかかわらず、多くの男女が店舗に訪れ、イヤホンの試聴にいそしんでいた。近年スマホの音楽機能の向上などが影響してか、イヤホンにこだわりをもつ人が増えているようだ。
さらに同店の最大の特徴が、耳型をとっての「オーダーメイド」が可能だということ。これらはカスタムIEM(アイイーエム=インイヤーモニター)と呼ばれ、先のアスリート達が買い求めたのもこのカスタムイヤホンだという。
具体的なオーダー方法は、まず店舗の地下で補聴器屋さんの協力を得て、耳型を採取する。そこから作成したいイヤホンの機種、素材を選択。注文してから1カ月~1カ月半ほどで完成品が届くという。好みで、オーダー時にイヤホンの背の部分に装飾を施すなども可能だ。
オーダー品のサンプルを見せてもらったが、ラメの入ったものにゴールドやシルバー、木目調素材と素材だけでも実に多種多様だ。さらにオーダー主がデザインした刻印が刻まれたもの、「具象」と呼ばれる立体的な飾りがついたものまで、アクセサリーといってもいいほど、きらびやかなものがそろっていた。ちなみに羽生選手や無良選手は店頭で注文したそうだが、プロ野球選手の場合は滞在先のホテルに出張し、そこで耳型を採取するというパターンが多いそうだ。
しかし、肝心なのは音の方。2000種類以上の品揃えがあるといっても、素人にその差がわかるのだろうか。というわけで、記者も試聴してみることに。普段聞いている音楽の方が違いがわかるだろうと、自身がいつも持ち歩いているiPodにつないで聞いてみることにした。