とてつもない球を投げる出力に耐えられる肉体をつくり、成熟度を増していく。吉井理人監督は投手コーチだった入団当時から手塩にかけて育ててきた。まだまだ発展途上のなかで、今季は「5カ年育成計画」の最終年。先発ローテーションを1年通じて守り、規定投球回数をクリアすることが期待されたなかで、1月下旬まで契約未更改だったことは大きな波紋を呼んだ。このニュースは、海の向こうの米国でも話題になった。ただ、その真意を測りかねる声が多かったという。

圧倒的に足りない

米国に駐在する通信員は、こう証言する。

「メジャー球界から最も熱視線を送られている選手であることは間違いない。ウインターミーティングで各球団の編成担当、選手の代理人から『彼はいつ米国に来るんだ?』と挨拶代わりで名前が出る。ただ、そのニュアンスは今年、来年にポスティングシステムで挑戦というわけではない。メジャーでは先発ローテーションで投げるイニング数が重視される。佐々木朗はこの数字が圧倒的に足りない。まだまだ投げる体力が伴っていないし、実績を積み上げる必要がある。トップクラスの選手になればいろいろな人間が近づいて、助言してくると思いますが、冷静に判断してほしいですね」

 メジャー球団の移籍に携わる代理人も同調する。

「あれだけ高性能の投手はなかなかいない。若さも魅力で興味を示す球団は複数あるだろう。ただ、NPBでシーズンを通じて一度も投げきっていないのに、メジャー挑戦は個人的に不安がある。故障のリスクが高いしね。メジャーで長期間活躍する投手を目指すなら、まだまだ日本球界でやるべきことがあると思う」

 佐々木朗は大谷を超える可能性を秘めた投手だ。グラウンド外の騒動で世間からの風当たりが強くなることは望む事態ではない。多くの野球ファンに愛される「国民的ヒーロー」として、今季も光り輝いてほしい。

(今川秀悟)