「群馬県一小さな町で民族も宗教も違う51カ国の人が大きなトラブルもなく暮らしている。平和に住んだ方がみんな得だと知ってるからだよ」(撮影/今村拓馬)

「転入届を正しく記入して持ってこられたら、町に引っ越しを拒否する権限なんてないんですよ」

 と理屈で説明するが、どこまでわかってもらえたかわからない。

 トラブルも相変わらずなくならない。夜中まで大音量で音楽をかけていた外国レストランに警官が駆けつけたときは、スタッフとの間に割って入り、「飲んだら騒がない。騒ぐなら飲まない」とお説教をした。

 外国籍の住民から「会社の寮から追い出されそう」とSOSが来た。住民と会社の双方によくよく事情を聴いてみると、その住民が転職したのに前の会社の寮に居座っているだけ、ということだった。「なんだそりゃ、ですよ」と村山は笑う。

「反発をもっている住民は多いですよ。アンケートを採ると、外国籍の住民で『もっと日本人と仲良くなりたい』というのは七十数%あるのに、日本人住民で『もっと外国籍住民と仲良くなりたい』という人は十数%です。このギャップをいかに埋めるのかが課題です。防災活動訓練などで一緒に地域のために働いている姿を見せるとか、時間はかかるけれどやるしかない。多文化共生と簡単にいいますが、それが一筋縄ではいかないことは、大泉町を見てもらえればわかると思う」

(文中敬称略)(文・神田憲行)

※記事の続きはAERA 2024年2月5日号でご覧いただけます

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