羽田空港のC滑走路(左側)。奥の場所でJAL機と海保機が衝突した。滑走路奥のJAL機が炎上した地点(手前)には消火活動の跡が残っていた=1月3日午前、東京都大田区
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 羽田の航空機事故はなぜ起きたのか。コックピット内の意思疎通、管制官からの情報などを有効活用するクルー・リソース・マネジメント(CRM)は機能したのだろうか。AERA 2024年2月5日号より。

【写真】衝撃的な一枚。炎をあげて燃えるJAL機

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 1月2日午後5時47分、東京都大田区の羽田空港C滑走路で、着陸した日本航空(JAL)の大型航空機(エアバスA350-900型)と同滑走路上にいた海上保安庁の双発プロペラ機(ボンバルディアDHC-8-315)が衝突した。JAL機の乗客乗員379人に犠牲はなかったが、海保機の乗員5人が亡くなった。1本の滑走路に、着陸する航空機と離陸準備をする航空機が同時に存在するというあり得ない事態が何故起きたのか。国の運輸安全委員会が調査を進めている。

 国土交通省は3日、航空管制官とJAL機、海保機との交信記録を公表した。それによると、JAL機には着陸の指示が出ている。海保機に対しては、午後5時45分11秒に「taxi to holding point C5(C5待機位置まで走行してください)」と伝え、海保機は同19秒に「taxi to holding point C5」と復唱している。それ以降、管制官から海保機に新たな指示は出ていない。

 だが、海保機の機長(上席飛行士、39歳)は聴取に対し、「管制官から滑走路への進入許可が出ていた」(離陸許可という報道もある)との認識を示しているという。

待機の指示を誤認か

 今のところ、事故の第一原因として、実際には待機の指示だったのに、海保機側が「滑走路への進入(または離陸)許可が出た」と誤認した可能性が濃厚だ。なぜそのようなことが起きたのか。コックピット内の音声を記録したボイスレコーダーの解析が究明の決め手となるだろう。

 管制官が離陸の順番を表す「ナンバーワン」と言ったことが誤解を生んだのではないかという見方も出ている。だが、離陸の順番を伝えるのはごく普通のことだ。また、管制官が能登半島地震の救援の任務がある海保機を優先させて割り込ませたのではないかという言説もあるが、そうとは限らない。

 基本的には用意ができた機から離陸させる。大型の民間航空機は離陸に必要な距離が長いため、滑走路の端まで行く必要がある。海保機は旅客機で言えば50人乗り相当ぐらいの小型機なので滑走距離が短く、C滑走路の途中にあるC5が待機位置になった。つまり、駐機位置からタクシーウェイ(誘導路)で待機位置に向かったのが民間機の方が先だったとしても、海保機のほうが待機位置に早く着く。それを見越して、1番目にしたのかもしれない。

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