「引退する」と言い出したら…
あまり知られていないが、(プロテクト枠から)人的補償に指名された選手が移籍を拒否した場合は「資格停止選手」となる。処分が解除されるまで試合出場ができないため、野球人生を考えると拒否するリスクは大きい。だが、この制度が機能しているかというと疑問が残る。パ・リーグの球団関係者が明かす。
「人的補償で外れていた超大物選手を指名しても、本人が『引退する』と言い出したらどうしようもできない。そんなモチベーションで移籍しても活躍できないし、本人が移籍を希望していないことが明るみに出たら、獲得した球団が悪者になる。FAの補償制度はルールを改正すべきだと思いますが、人的補償の撤廃については反対です。そうなると、資金力のない球団は選手を引き抜かれるだけで不公平すぎる。現行は人的補償なしで金銭補償のみを求める場合は、Aランクの選手が旧年俸の80%の金銭、Bランクの選手が旧年俸の60%の金銭となっていますが、この設定は低すぎる。移籍金の設定を見直す必要があるし、メジャーのようにドラフトの指名権を譲渡する補償制度も検討の価値がある」
FA制度が導入されたのが1993年。30年が経過したが、過去に人的補償での移籍を拒否して「資格停止選手」となったケースはない。ただ、このデータを額面通りには受け取れない。プロテクト枠のリストを保有しているのは、FAで選手が移籍する当事者の2球団のみ。水面下で行われているため、どのようなやり取りが交わされているのか分からない。FAの人的補償を巡る一連の騒動でファンの不信感を呼んでいるのは、この仕組みが大きく影響している。