もちろんユース年代で世界のトップに立ったといっても、年齢制限のないシニア競技でトップレベルに成長する保証はない。だが、サニブラウンには、まだまだ伸びしろがあるのではと思わせるものがある。

 これまでも世界のトップレベルで戦ってきた日本の名短距離走者は数多くいた。1998年に10秒00の日本記録をつくり、アジア人初の9秒台の期待を持たせた伊東浩司、世界陸上の100mで5度も準決勝に進出し、あと一歩のところでファイナリストを逃してきた朝原宣治、2003年世界陸上パリ大会の200mで銅メダル獲得の快挙を成し遂げた末續慎吾…。現在のトップスプリンターにも9秒台の期待感がある高瀬慧、桐生祥秀、山縣亮太などがいる。

 いずれもすばらしい選手たちだが、彼らが国際大会で堂々たる体躯の外国人選手とともに走ると、どうしてもパワー負けを感じることがある。厳しい練習を自らに課して筋力をつけ、フォームも磨きに磨いて挑むのだが、結局は外国人たちにパワーでねじ伏せられてしまうという感じだ。

 だが、サニブラウンにはそれがない。身体能力はむしろ上。上半身の筋肉はまだつききっておらず、これからトレーニングを重ねてつけていく段階。順調にパワーと理想的なフォームが身につけば、9秒台は出るだろうし、決勝で上位争いもできるのではないか。

 こうした可能性を感じさせるのは、やはりガーナ人のDNAを受け継ぐハーフだからだろう。

甲子園、Jリーグでも活躍するハーフのアスリートたち

 最近の日本スポーツ界は外国人の父親か母親を持つハーフのアスリートの活躍が目立つ。サニブラウンが2位に入った日本陸上選手権100mで4位になったケンブリッジ飛鳥(22・日本大学)はジャマイカ人の父と日本人の母を持つ。また、やり投げで日本歴代2位の記録を持ち、2012年ロンドン五輪で決勝に残ったディーン元気(23・ミズノ)は英国人の父と日本人の母を持つハーフだ。

 甲子園で行われている高校野球にも注目のハーフ選手がいる。大会第6日の第2試合(予定では11日)に登場する関東第一高のオコエ瑠偉外野手だ。オコエは東東京大会決勝の日大豊山戦に1番センターで出場し、3安打2盗塁3得点と大活躍し勝利に貢献したが、それだけでなく観衆の度肝を抜くプレーを見せた。4回にセンター前のヒットを打ったのだが、1塁で止まらず2塁まで行ってしまったのだ。

 つまりセンター前のツーベース。普通ではありえないプレーだが、本人は「センターが深く守っていたので、行けると思いました」と語っている。オコエはナイジェリア人の父と日本人の母を持つ。こんなプレーができるのも、50mを5秒96で走るずば抜けた身体能力と、大事な決勝でも型にはまらず思いきりチャレンジできる野性味があるからだ。ハーフ選手ならではのプレーといえる。オコエは俊足だけでなく、打撃にも守備にも秀でており、プロのスカウトも注目する逸材。どんなプレーを見せてくれるか楽しみな選手だ。女子バレーボールでは17歳で全日本入りを果たした宮部藍梨がいる。ナイジェリア人の父と日本人の母を持つハーフで、181センチの身長があるうえ、驚異的なジャンプ力を持ち、次代の日本のエースになると目されている

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