商店街や公園の見回りをする派遣社員(撮影/長野美穂)

 その真向かいには高齢者専用のアパート、はす向かいにはカトリック教会と学校がある。

 サンタモニカ市が昨年発表した市のホームレス人口は926人。コロナ禍の失業増などの影響もあり、一昨年より15%増加した。だが、アレ氏と仲間たちが深夜に実際に市内を歩いて、独自にホームレス人口を数えると、その数は2千人を上回ったという。

「私たちが水のボトルと簡易毛布とレインコートの3点を差し出すとホームレスの人々全員がサンキューと言って受け取った。話を聞くと、彼らの多くが道端でIDの盗難に遭ったり、刺されたり、石で襲われたりしていた。夜間のシェルターが十分設置されていれば、彼らの安全も守られるはず」(アレ氏)

 そんなアレ氏も昨年9月半ばの昼間にパリセイズ公園の様子をスマホで撮影中にホームレスの男性から殴られ、意識不明になるまで頭を蹴られた。通行人が警察に通報し、容疑者は逮捕され、アレ氏は病院に搬送された。顎の手術や、頭蓋骨を開けて頭に溜まった血液を抜く手術を受けてやっと回復したという。

「もう一度同じことが起きれば死ぬかも。あの日、護身用のペッパースプレーを忘れて携帯してなかったのが自分の落ち度」とアレ氏は言い、ホームレスの調査は今後も続けていくという。

「市警察はよくやっているけど、警官の数が圧倒的に足りない。今蔓延しているフェンタニルなどのドラッグ中毒をなくすだけでも、ホームレス問題の解決に近づくはず。何より生まれ育ったこの街が好きだから、治安改善を目指して、諦めたくない」

950ドルのジレンマ

 治安の目安として、犯罪件数はどうなっているのだろうか。

 例えばサンタモニカ市の隣のロサンゼルス市の場合は、LA市警の統計によれば、昨年の12月3日から30日までの27日間に、実際に逮捕された件数は、殺人事件が34件、レイプが15件、強盗が161件、そして窃盗が379件と凄まじい数だ。

 一方、サンタモニカ市警の発表では、昨年の1月から8月までの8カ月間に通報された殺人事件が2件、レイプが32件、強盗が148件、そして窃盗が1894件。LAと比較すると確かに犯罪件数は少ない。だが、昨年11月には市内のラグジュアリー専門中古品店で、覆面を被った4人組が金槌でディスプレーを破壊してハンドバッグなどの商品5万ドル分を盗んで逃走する、通称「スマッシュ・アンド・グラブ」犯罪が起き、同様の事件も複数起きている。

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もはや警察に届けない「窃盗」