サンタモニカ観光目玉の観覧車とビーチ(撮影/長野美穂)

 カリフォルニア州では2014年以降、950ドル未満の窃盗の場合、軽犯罪として扱われ、刑務所送りにはならない。

「だから、950ドル未満の商品を盗まれた場合、我々の商店街の店員たちの多くは、もはや警察には届けない。犯人は刑を免れるし、警察に届ければ、店が保険会社に払う金額が上がるだけだから」(アレ氏)

レストランも「SOS」

 つまり、統計数字には含まれない犯罪が増えているのだ。さらに「ホームレスと犯罪が増え、もう、我々の従業員は安心して働けない」と市内の30のレストランのオーナーたちが団結し、「ホスピタリティー・サンタモニカ」という団体を立ち上げて訴えた。野外パティオ部分に客席を設けている店では、路上のホームレスが店員に殴りかかる事件も起きているからだ。「駐車場から店までの裏道を歩く時にホームレスが多数いて怖いから、家族に送り迎えをしてもらっている」と語る従業員もいた。

 さらに、追い打ちをかけるように、独立した路面店としては市内で最大級の大きさを誇るアウトドア用品専門コープのREIが17年間の営業の末、市内から店舗を撤退すると発表した。

 サンタモニカ市議会はホームレス問題を「緊急事態」と宣言。観光客が頼みのこの繁華街は今大きなハードルに直面している。

(在米ジャーナリスト・長野美穂)

AERA 2024年1月22日号

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長野美穂

長野美穂

ロサンゼルスの米インベスターズ・ビジネス・デイリー紙で記者として約5年間勤務し、自動車、バイオテクノロジー、製薬業界などを担当した後に独立。ミシガン州の地元新聞社で勤務の際には、中絶問題の記事でミシガン・プレス協会のフィーチャー記事賞を受賞。

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