「糖尿病網膜症」は初期には無症状。糖尿病患者は要注意
糖尿病網膜症は、糖尿病によって網膜が障害を受け、視力が低下する病気です。糖尿病患者は約2千万人いて、その人たちはこの病気になるリスクがあります。ただし近年では、糖尿病患者の内科の治療が行き届き、糖尿病網膜症の重症患者は減っているといいます。
糖尿病網膜症は、初期には無症状なのですが、自覚症状が出てからでは治療の範囲が限られてしまいます。自覚症状があれば、単純型、前増殖型、増殖型という3段階のどこかに属しています。
単純型は初期の網膜症で、小さな出血や毛細血管瘤(りゅう)などが出現するのみで自覚症状はほとんどありません。内科の治療だけで治ります。より進んだ前増殖型は、網膜の毛細血管が閉塞し始め、網膜のところどころに酸欠の部分が出て、レーザー治療が必要になります。さらに進行した増殖型は、新生血管が出現して硝子体に出血を起こし、必ず失明にいたりますので、手術が必要になります。
治療をしなければ失明にいたるので、早期発見や治療が大切です。糖尿病患者は、定期的な眼底検査を受けましょう。
「眼科に行かなくても早期に発見できるよう、AI画像解析を用いた診断支援の技術が開発されました。今、実用化に向けて取り組んでいるそうです」(門之園医師)
40代以降の人は、年に一度は眼底検査を受けること
これらの病気は、どのような検査を経て診断されるのでしょうか。
「網膜の病気の検査は大きく三つあります。一つ目が、一般的な視力検査です。二つ目が、眼底検査。瞳孔(どうこう)を通して網膜や視神経のすみずみまで調べる検査です。瞳孔は光を当てると小さくなるので、点眼薬で一時的に散瞳(さんどう。瞳孔が広がること)させることが必要です。散瞳すると多くの光が眼に入るのでまぶしく、それが6時間ほど続きます。三つ目が、網膜の断層画像を撮影する光干渉断層計(OCT)検査。黄斑部の病気の診断で必須の検査です」(門之園医師)
特に症状や病気がなくても、門之園医師がすすめているのは、強度近視の人、スマホやパソコンを1日に4時間以上使う人、ゲームを1日に1時間以上する人、40代以降の人は、年に一度は眼底検査を受けることです。
「神経系の病気ですから、受診したときに手遅れになっている場合があります。目の疲れやかすみという訴えでも、眼科医は眼底検査を必ずしてくれるものです。『眼底検査を受けたい』と伝えるのでも構いません」(門之園医師)
(取材・文/小久保よしの)