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 眼の病気は発見が遅れると、失明してしまうケースがあるため、知識をもつことが大切です。今回は、網膜にまつわる複数の病気について解説します。

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 本記事は、2024年2月下旬発売の『手術数でわかる いい病院2024』で取材した医師の協力のもと作成し、お届けします。

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網膜は、眼球の最も内側に貼り付いている透明な膜

 普段、当たり前のようにものが見えていると、私たちは眼をあまり意識することがありません。でも、眼にまつわる病気はたくさんあります。

 今回紹介したいのは、眼のなかでも網膜の病気。網膜は、眼球の最も内側に貼り付いている透明な膜です。カメラでいうフィルムの役割をもち、視覚情報を脳へ伝達しています。網膜の病気には難治性のものが多く、横浜市立大学市民総合医療センターの眼科部長・教授の門之園一明医師は「近年では、網膜の病気に対する一般の人の関心が高まっています」と話します。

 特に気をつけたい網膜の病気は、加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)、網膜剥離(はくり)、黄斑上膜、糖尿病網膜症の四つだといいます。それぞれ解説していきましょう。

初期では視界の中央部が見づらい「加齢黄斑変性」

 一つ目が、網膜の中心に出血やむくみをきたし、視力が低下する加齢黄斑変性です。黄斑とは、網膜の中心にある0.3ミリ程度のとても小さな領域。放置すると進行し、視力は回復しなくなります。60代以降の高齢者に増えていて、6千〜7千人に1人がかかっています。

 主な症状は、中心暗転といって視界の中央部が見えなくなります。初期はものがゆがんで見える、視界の中央部が見づらい・灰色になってかすむなどの症状が多く、進行すると、中央部が真っ暗になって見えなくなり、飛蚊症(ひぶんしょう)が絶え間なく見えます。ゆっくり見えなくなるのと、急に見えなくなる2タイプがあり、前者が多く、後者は全体の1〜2割です。

 予防として、禁煙が大切です。以前は、「紫外線は網膜にダメージを与えるのでサングラスで保護を」と言われていましたが、エビデンスはないといいます。

「予防では栄養療法が研究され、活性酸素の悪影響を軽減する抗酸化ビタミンや抗酸化酵素を構成するミネラルなどが注目されています。適切な補助薬(サプリメント)は有効ですが、眼科で適切なアドバイスを受けることができます」(門之園医師)

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約7千人に1人と、罹患率が増えている網膜剥離