夏休みがはじまり、ご家族でのおでかけも増える時期。あまりに暑い日はなるべく外に出ないでおきたいものですが、旅行やお祭り・ライブなどの夏イベント、またはお仕事などで、炎天下を歩くことはどうしてもありますね。毎年、熱中症で命を落とす人が後を絶ちません。気づかず放っておくと重症化する一方、ちょっと注意すれば未然に防ぐことができる、熱中症。炎天下で「決してしてはいけないこと」とは何でしょう?

水分補給は「するべきこと」ですよね
水分補給は「するべきこと」ですよね

ガマン厳禁! 根性もキケンです

わりと最近まで、日本では「暑さはガマンできるもの」という考え方が幅をきかせていました。湯船やサウナに長時間とどまったり、灼熱の浜辺でわざと厚着をして熱いお茶をすすったりする「ガマン大会」、炎天下のグランドで「練習中に飲み物は禁止令」、エアコンのスイッチを極力入れないで「心頭滅却」または「電気代の節約」等々と、そこには「暑い・渇くと訴えるのはワガママの一種である」の認識や「根性さえあれば夏の暑さなど克服できるはず!」という強い信念が感じられます。
ところが、ご存じのように地球は温暖化しています。熱中症による死亡事故のニュースが年々報じられ、このような行為はたいへん危険だと多くの人が知るところとなりました。
ご高齢の方には、根性があるゆえの熱中症が多くみられます。さらに、年齢とともに暑さやノドの渇きを感じにくくなることも、発症の大きな原因だそうです。言われてみれば、祖母(故人)は晩年、夏はいつも蒸し風呂のような個室でコタツ(コンセントは抜いてある)に入ってウトウトしていたものです。それを見て「こんな暑い部屋で!」と心配したり叱ったりしていた母が、近頃なぜか、やっぱり蒸し風呂のような部屋でソファにもたれて平気でウトウトしているのは、暑さを感じにくくなっているのかもしれません。
熱中症は、じわじわ進行して急に重症化するといわれます。一命をとりとめても脳障害が残るなど、予後も深刻。本人が自覚しないまま発症するのが怖いところですね。
じつは年齢にかかわらず、おでかけ時は目の前のことに気をとられて「熱中症の危険」を忘れがち。足元がふらついたり、頭痛や手のしびれを感じてはじめて「何かおかしいかも?」と気づく方が多いようです。しかも同伴者がいると、楽しい時間に水を差すようで口にしにくく、辛くてもガマンしてしまったりします。けれど、倒れてしまっては元も子もありません。ガマン大敵!です。

「数字でルール化」して、身を守りましょう

・15分歩いたら、たとえノドが渇いていなくても、水をひと口飲む
・1時間たったら、たとえ疲れていなくても、涼しい場所でちょっと座る
「ガマン」の危険から身を守る有効な方法は、「数字でルール化」することです。
ひとりでおでかけの際も『熱中症ルール』を決めておけば、つい無理する事態を避けられますね。公共のプールなどでは、一定時間ごとに休憩が設定されているところもあります。ピーッと笛が吹かれて「これから全員、5分間休憩してください」などとアナウンスされた時は「あ〜あ、いいところだったのに」と面倒に思うのですが、いざ水から上がってみると、疲れなど感じていなかったはずが体の重さにびっくり! 自覚がなくても、じつは体はすごく「ガマン」しているかもしれませんよ。
室内でも、ふだんから具体的な数字をはっきり決めておくことで、高齢者や子どもにも適切な予防行動がしやすくなります。「温度計が28℃になったら、たとえ暑くなくてもエアコンのスイッチを入れる(または自動運転設定しておく)」「○時までに、このカップのお茶を必ず飲みきる」のように、一緒にルールを考えてみてくださいね。

「補給するもの」と「冷やすもの」を身につけて

玄関を出る前に、コップ1杯の水と塩分を摂ってからおでかけしましょう。体がちゃんと汗をかける状態にするのが目的です。
水はノドが渇く前に、少しずつこまめに摂取するのがポイント。一回に飲む量は、10分間で300mlまで。それ以上だと、体の吸収が追いつかないそうです。「ガブガブ、プハ〜ッ!」は胃腸に負担がかかる飲み方なのですね。また、なまぬるい水よりも 5℃〜15℃くらいに冷えている方がクールダウンには効果的です。逆に冷たすぎると、お腹をこわしやすくなります。
甘い炭酸飲料やアイスはもちろん、スポーツドリンクも意外と糖分が多いので、飲み過ぎに注意しましょう。塩分は、じつはたいていの場合食事で足りているのだそうです。むしろ摂り過ぎに注意してください。大量に汗をかく日は、塩飴や小梅干しなどの携帯もお勧めです。
保冷バッグに保冷剤や濡らしたタオルなど、おでかけ先で体を冷やせるものを入れてでかけましょう。濡れタオルで肌を拭くと、蒸発するとき体の表面温度を下げられます。保冷剤を包んだ布を首に巻くのもお勧めです。
服装は、風通しがよいものに。やむを得ずネクタイや制服など熱のこもりやすい服装でおでかけする時は、首筋や脇に冷却スプレーや発熱時に使う「冷却シート」などを貼って太い血管を冷やすようにします。
最近は、100均にも豊富にクール・グッズが揃っています。ご家族・お友達との旅行に楽しいグッズを選ぶと、気分も盛り上がりますね。

「寄り道」もしちゃいましょう

外を歩くときは、 頭と首を直射日光から守るようにします。 日焼け防止のうえでも、日傘やつばの広い帽子が望ましいのですが、屋外コンサートなど使用できない状況下ではフード付きのタオルやUVジャケットで対応しましょう。
できるだけ街路樹や屋根の下など日陰を選んで歩くようにします。信号待ちのときも、日陰をさがして入るようにすると体力を消耗しません。「ちょっとここで待ってて」というときも、直射日光が当たらない場所を意識してくださいね。
日傘は、日陰を自分でつくることができる優れた携帯シェルター。男性もぜひご使用を。
「歩行途中に『クールシェルター(冷房28℃にした建物内や店舗など)』に20分ほど立ち寄るようにすると、目的地に直行してから20分間休憩するよりも体温や発汗量を下げる効果がある」という環境省の調査報告も・・・。時間にゆとりをもってでかけ、目的スポットだけにこだわらず通りかかったお店でひと休みしてみるのも、意外な穴場を発見できるかもしれません。
体調管理を万全にして、夏のおでかけを元気に楽しみたいですね。