いい意味の「ノイズ」を
フォトジャーナリストで、ガザへの取材経験もある安田菜津紀さんは、すべての戦争や紛争を止めるには「可視化」が必要だとして、そのためには「一にも二にも市民の力が重要」と強調する。
「フランスのマクロン大統領がイスラエルとハマスに『停戦』を呼びかける発言をしました。これは、どこからも何の声が上がらず成し得たことではないと思っています。ガザへの攻撃は非人道的だと思う人たちが声を上げ、可視化したからこそ、発言に繋がったのだと思います」
ボイコットも、戦争を止める手段として有効だ。南アフリカが長年実施してきた、白人が黒人らを差別する「アパルトヘイト(人種隔離政策)」を廃止に追い込んだのは、国際社会が経済・文化・スポーツなどの分野で南アとの関係をボイコットし、圧力をかけたことが一因だった。
ガザへの攻撃でも12月中旬、ドイツのスポーツ用品大手の「プーマ」が違法入植地のチームを含むイスラエルサッカー協会とのスポンサー契約を更新しないと発表した。SNSでは、イスラエルを支援する企業に対する不買を呼びかける声が拡大している。安田さんは言う。
「こうした、いい意味での『ノイズ』を出していくことが重要です。日本でも、デモや集会でイスラエルへの抗議の声を上げる人が増えています。その声が政治を動かし、戦争や紛争を止めることにつながります」
和平への道も、核廃絶も簡単ではない。だが、24年は、そのための英知を結集する年としなければいけない。戦争で失われる命をなくすために。人類の歴史から戦争をなくすために。(編集部・野村昌二)
※AERA 2024年1月1-8日合併号より抜粋