「クイズノックの成功はクイズ界にとってかなりプラスに働いている」と話すのは、「競技クイズ界最強の男」の肩書を持つ徳久倫康さんだ。21年度まで批評家・東浩紀氏が創業した株式会社ゲンロンに在籍。戦後日本の歴史をクイズ文化の変化から考察する論文「国民クイズ2.0」を発表し、話題を呼んだ。22年8月からクイズノックを運営する株式会社batonに所属している。
「ここ5年で高校や大学のクイズ研がものすごく増えていますし、クイズに関する認知度も上がってきています。これは彼らの力が大きい」(徳久さん)
ウルトラの第13回大会準優勝、「FNS1億2000万人のクイズ王決定戦!」優勝などの受賞歴がある永田喜彰さんは、クイズノックの若者への影響を肌で感じているという。アーケードゲーム「クイズマジックアカデミー」をプレーしている永田さんは、若者の姿をよく見かけるそうだ。
「彼らに『どうしてクイズをするようになったの?』と質問すると、『クイズノックさんが好きで』と答える人が多いんです。女性のプレーヤーが増えてきたのも、クイズノックの影響だと思います」(永田さん)
一般の人がクイズを楽しめる環境が整ってきて、近年、クイズの裾野は広がり続けている。
永田さんは「いまのクイズ界はすごく魅力的」と話す。
「私たちの世代はテレビのクイズ番組の予選会がプレーヤーと出会うほぼ唯一の機会でした。けどいまはオンラインやアーケードゲームで簡単にクイズを楽しめる。そこで同好の士と出会い、交流することもできる。うらやましい限りです」
■クイズが秘める悪魔的な面白さ
このような環境が整ってきたのもクイズそれ自体に魅力があるからだろう。プレーヤーたちは一体クイズのどこに惹かれているのか。
「対人要素がクイズの醍醐味」と語るのは、前出の徳久さんだ。昨年は約50の大会に出場した。真剣勝負や人間関係が広がることの楽しさに加え、クイズには「コミュニケーションが成立したという喜び」があるという。