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球面収差を使ったソフトレンズ

 レンズベビーといえばチルト機能を有しピント位置を変え、特異な描写をするレンズとして有名だが、本レンズはソフトフォーカスに特化した35mmフルサイズのイメージサークルをカバーする新製品だ。
 製品名にもある「ベルベット」は絹織物に代表される滑らかで光沢のある生地のことで、本レンズの描写を表現したのだろう。多くのソフトフォーカスレンズ同様、このレンズでも高次の球面収差によりソフト効果を得ている。特性上絞り値によるソフト効果の違いが大きくなる。



ソフトフォーカス写真はピンボケとは異なる。フォーカスの芯がありながらハイライトやエッジがにじむのが特徴だ。ライブビューを使ったほうが、ピント位置の見極めとソフト効果がわかりやすい●キヤノン EOS 5D MarkIII・AE(絞りf1.6・2500分の1秒・+0.3補正)・ISO100・AWB・RAW
ソフトフォーカス写真はピンボケとは異なる。フォーカスの芯がありながらハイライトやエッジがにじむのが特徴だ。ライブビューを使ったほうが、ピント位置の見極めとソフト効果がわかりやすい●キヤノン EOS 5D MarkIII・AE(絞りf1.6・2500分の1秒・+0.3補正)・ISO100・AWB・RAW


 MFレンズであり、電子接点が設けられていないために、使うにはそれなりにコツが必要だが、専用ソフトレンズを使うことは表現意思を明確に持って撮影に挑むという意味につながる。撮影者の思惑と合致するとカメラ内蔵のエフェクトとは異なる描写が得られる。


デザイン
鏡胴は金属製。シルバーでも黒モデルでも光沢のある仕上がりで派手。シルバーはニコン用とキヤノン用のみ。小さなパイナップル形で存在を主張したデザインだ。レンズは鏡胴の奥まったところに位置している

使用感・操作感
最大撮影倍率は1:2倍。マクロ領域にも強い。フォーカスリングのトルク感もまずまず。今回はEOS 5D MarkIIIを使ったが、マット面の特性であろうか、被写界深度が深く見え、ファインダーではソフト効果がわかりづらい

描写性
絞り開放でソフト効果が最大、絞りf2.8くらいまでは効果が得られる。球面収差を使ったソフトレンズの特性上、近接時のほうがさらにソフト効果が大きくなる。球面収差量の大きなテッサータイプの特性を逆に生かしている

◆ 赤城耕一


* * *
●焦点距離・F値:56mm・F1.6●レンズ構成:3群4枚●最短撮影距離:13cm(レンズ先端から)●最大撮影倍率:1:2●画角:43.3°●フィルター径:Φ62mm●マウント:キヤノン用、ニコン用、ソニーA用、ペンタックス用●大きさ・重さ:Φ72×85.25mm・410g●価格:オープン(実売5万9800円)