そんなわけで、マキタさん演じる三宅祐のアフロは、制作陣により「なかったことに」封印された。そう面白おかしく語ってくれたが、キャラクターの風貌が原作とドラマで異なることに、原作ファンの拒否反応がなかったのは珍しいのではないか。
「アフロでない店長を受け入れてくださったのは早かった感じがします。アフロかアフロでないかということより、ドラマとしてのクオリティー、作品として目指すところ、シロさんとケンジのキャラクターと、西島秀俊さんと内野聖陽さんがその役柄を完全にものにしているところなど、トータルでこのドラマは原作の世界観とほぼ変わらない。
だから、原作ファンの皆さんも腑に落ちたというか、納得いただいたのだと僕は思うんですね。僕が演じる三宅祐は原作のキャラクターとぱっと見は違うんですが、作品全体の世界観の中で、存在が許されたような気がしています」
ちなみに、唯一、アフロでない三宅祐に難色を示した人物がいたという。いったい誰なのか。
「友人の芸人で、学者のサンキュータツオが、まさか僕が『きのう何食べた?』に出るとは思わず、ドラマを見ていたそうです。僕が登場して、『すごいがっかりした』と言ってました(笑)。
サンキュータツオは漫画オタクで、原作の大ファンなんですよ。実写のドラマ化もものすごく楽しみにしていたら……僕が出てきた」
親しい間柄ならではの遠慮のない感想だが、いかに幅広い層が作品を愛していたかが伝わってくる。
何も起こらないドラマの魅力
マキタさんは、改めてこのドラマの「何も起こらない」からこその魅力をこう語る。
「基本的に大きな事件が起こらないドラマで、登場人物がみんな真っ当な人間。悪者が出てきて、事件解決に向けて動くようなドラマではない。心の中で起きている感情の揺れみたいなのが、ドラマのエッセンスになっている。
真っ当な人たちなので、ドラマの脚本や撮り方次第では全く面白くなくなってしまう。
例えば、シロさんは弁護士事務所に通勤する真っ当な人物ですよね。帰宅時には、夕飯の買い物にスーパーマーケットに行き、自宅で料理をし、パートナーと一緒にご飯を食べて、夜になれば就寝、朝起きて、また事務所に通勤する……この繰り返しですよね。それ自体は、ちっとも面白くないと思うんですよ。なぜなら、真っ当な人だから」
確かに、そうだ。作中で描かれているのは、私たちも送っている繰り返しの日常だ。
驚くほど何も起きないドラマ「何食べ」を、私たちは深く愛している。2024年、「Season3」へのアツいムーブメントは、巻き起こるに違いない。(AERA dot.編集部・太田裕子)
【後編も読む→】ドラマ「きのう何食べた?」の現場は「ケンジとのセッションのよう」マキタスポーツが語る現場秘話