
AERAで連載中の「この人のこの本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。
1943年から読み継がれているサン=テグジュペリ著『星の王子さま』。その中の名言と、彼自身によるさし絵を一冊にまとめたキャサリン・ウッズの本を、中条あやみさんが英語から日本語に翻訳した。手のひらサイズの本に、子どもの心、愛、宇宙と星、友情など、34の言葉が収録されている。中条さんの初めての翻訳書となった『大切なことを教えてくれる 星の王子さまのことば』。中条さんに同書にかける思いを聞いた。
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刊行から80年を迎えた『星の王子さま』。中条あやみさん(26)が訳した名言集には〈ほんとうに大切なことは 目に見えないんだよ〉〈誰もが自分の星を持ってる でも、人とはちがう星なんだ〉などの言葉が収められている。
「『星の王子さま』にはファンがたくさんいるから、自分の訳で大丈夫なのかなという不安はありましたが、私自身、思い入れのある作品なので、ぜひという思いで引き受けさせていただきました」
初めて『星の王子さま』に出合ったのは小学校高学年の時だった。イギリス人の父親と日本人の母親を持つ中条さんは、みんな一緒、みんな同じがいいとされる価値観になじめずに悩んでいた。図書室で手に取ったのがこの本だ。
「言葉の一つ一つに不思議と共感できる感覚がありました。ものの見方や感じ方が似ていて、ソウルメートができたみたいな気持ちでした。バラの花が出てきたりするロマンチックな感じがラブストーリーを読んでいるようで、キュンとした思い出があります」
その後、モデルと俳優の仕事を始め、20歳を過ぎたころ、中条さんは再び葛藤を抱える。年齢は大人になったけど、自分は何者なのか、どういう自分でいたらいいのかがわからない。そんな時、年上の友人がこの本を贈ってくれた。
「改めて読んだら、私は私のままでいいんだって、本に言ってもらえた気がしました。背中を押してもらえる一冊になりました」