世界中で、戦争や紛争が起きている。2023年ほど「戦争」を意識した年はなかった。今もガザでは命が奪われ続けている。AERA 2024年1月1-8日合併号より。
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今この瞬間も戦争で命が失われる。ゲームのように、画面の向こうで人が殺されていく。
「本当に一秒でも早く、人が殺されるのを止めたいです」
東京・永田町の国会前。埼玉県に住む石橋亜希子さん(42)は力を込めた。SNSでパレスチナ自治区ガザ地区の惨状を目にしてきて、いても立ってもいられず、初めてデモに参加した。
イスラエル軍がガザへの攻撃を一段と激化させるさなかの12月10日、国会前で即時停戦を求めるデモがあった。女性や若者ら約1500人(主催者発表)が国会前を埋め、「誰も殺すな!」「フリー、フリー、ガザ!」と平和への声を上げた。
10月7日にイスラエルとイスラム組織ハマスの軍事衝突が始まって以降、ガザでの死者は1万8千人を超えた(12月18日時点)。
「民族浄化だ」
フォトジャーナリストで、ガザへの取材経験もある安田菜津紀さんは、大前提として、ハマスが奇襲攻撃でイスラエルの市民ら約1200人を殺害したことは適切に裁かれなければならないとした上で、「今ガザで起きていることはジェノサイド(集団殺害)であり民族浄化だ」と厳しく批判する。虐殺して多くの人の命を奪うだけでなく、民族の存在そのものを否定するものだ、と。
「ガザ南部への攻勢がさらに強まった場合、イスラエルは『人道』の名の下、エジプトとの境界にある検問所を開けガザの人たちにエジプト側に出ていくしかない状況をつくり出すかもしれません。ガザを生存不可能な状態にし、強制的に移住させることで民族の存在そのものを否定する。それが民族浄化です」
背景には「長年にわたり続く構造的な暴力がある」と安田さんは言う。1948年、ユダヤ人がイスラエルを建国すると、パレスチナ人は故郷を追われた。
「ガザ地区とヨルダン川西岸は長年にわたってイスラエルの占領下におかれ、高い塀に囲まれ封鎖が続いています。そして、差別的な政策により、パレスチナ人は尊厳のある日常が奪われてきました。こうした綿々と続いてきた構造的な暴力を抜きにして語ることはできません」