ナット・チェン(左):1996年12月19日生まれ。「奇蹟」でチェン・イー役を演じた。バスケットボールのスペシャリストとして大学在学中にモデルの活動を開始。卒業後、俳優の道へ進む/ルイス・ジャン(右):2000年12月21日生まれ。「奇蹟」でアイ・ディー役を演じた(撮影/写真映像部・高野楓菜)

――日本のエンタメではヒット作もあり、BL作品は一ジャンルになった感がある。台湾ではどうなのだろうか。

カイ:僕はBL作品がどれくらい流行っているかに、その国の性別に対する寛容性が表れると思っています。タイではBL作品がとても流行っていて、BL作品に出演していた俳優たちが有名ブランドのモデルを務めています。台湾はまだそこまでオープンではないので、寛容な考え方がもっと広がってほしいと思っています。

「この人だから好き」

ナット:BLというジャンルが存在すること自体、一種のラベリングだと思います。男性同士が恋に落ちることが特殊だと思うから、BLというジャンルが生まれた。でも、本来人を好きになるというのは、「この性別の人が好き」ということではなく、「この人だから好き」というものでしょう。だからBLというジャンルのない世の中になればいいなと思います。

タロ:その通りだと思う。「奇蹟」の劇中でも、男性カップルの結婚が祝福されているシーンがありましたが、僕たちからしたらあのシーンは自然だけど、同性婚を認めない人たちからしたら、不自然なのかもしれない。

カイ:やっぱり理想はみんなが自然でいられることだよね。

――「奇蹟」に登場するファンとバイ、チェンとアイのカップルにはそれぞれ事情と思惑がある。

カイ:僕は自分が演じたファンとバイのカップルの方に共感します。4年後に二人がばったり再会するシーンがありましたが、ある事情で知らないふりをしなければいけなかった。昔の僕はまっすぐに恋愛することを大切にしていたんですが、今はいろいろな事情を意識してしまうようになったので、あのシーンは特に共感しました。

タロ:僕はどちらのカップルにも共感できます。チェンとアイのカップルは幼なじみの間柄なので、素直に自分の気持ちに向き合えないところがリアルです。バイとファンは性格的な違いがあって、補い合える関係性で良いなと思います。

ルイス:僕は自分が演じたアイとチェンのカップルに共感します。僕も自分の気持ちに素直になれない時期があったからです。

ナット:僕も自分が演じたチェンとアイに、より共感します。僕は性格的に感情を潜めてしまうところがあるので、チェンの「愛情はちゃんと伝えなければいけない。時間が経てば伝えられなくなってしまうかもしれないから」というセリフに、はっとさせられました。9話で酔ったチェンがアイに「ずっと俺を見るって言ったのに」と言うシーンがあります。チェンはあまり感情を表に出さないし、お酒に強いのに、あのセリフを言うということは、相当アイを想っているということ。あのシーンが一番気に入っています。あそこのルイスのお芝居も好きです。

次のページ