
蜷川は、チームとして、そして来場者とともに作品をつくりあげることの面白さを改めて感じている。
広く、そして深く
「たとえば『胡蝶のめぐる季節』は、人が入ったときに初めて作品として完成する。腕を組み一人で鑑賞するだけでなく、周りにいる方たちを感じながら体感して頂ける展覧会を作れたのではないか、と思っています」
蜷川が作品をつくるうえで大切にしているのは「間口は広く、入ったら深く」という考えだ。
この言葉に宮田は深く感銘を受けたという。間口を狭く設定しようと思えばいくらでもできる。だが、広くて深い分にはそれは素晴らしいことではないか、と。
「今後、生成AIが存在を強めていくなかで、人間の仕事というのは『問いを立てること』に繋がる。答えがないものに向き合い『自分はこう感じるんだ』という感覚を大切にしていく。感性を磨く体験を提供していくことは、アートの重要な役割になっていくと思います」
驚きに包まれる1度目以上に、2度観ることで心に染みるものがある。そんな稀有なアート体験が待っている。
(ライター・古谷ゆう子)
※AERA 2024年1月1-8日合併号