
東京・虎ノ門で開催中の「蜷川実花展 Eternity in a Moment 瞬きの中の永遠」。一つのチームとして、作品づくりに向き合った宮田裕章と蜷川が、発想の原点、そしてアートの未来について語り合った。AERA 2024年1月1-8日合併号より。
【写真】「胡蝶のめぐる季節」。写真や映像は日常で撮影されたものでありCGを用いず制作されている
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地上200メートルの場所にあるその空間に足を踏み入れると、朽ちたヒマワリが目に飛び込んできた。作品タイトルは「残照 Afterglow of lives」。「Breathing of Lives」と名づけられた部屋には、現代とも未来とも捉えることのできる、都市をテーマにした映像作品が並ぶ。作品ごとに異なる音楽が流れ、「鑑賞」というよりは「体験」という表現がふさわしいのかもしれない。ポップで色鮮やかなイメージの強い蜷川の世界観とはやや趣の異なる空間が広がる。
ここは虎ノ門ヒルズステーションタワーにある「TOKYO NODE」のギャラリー。「蜷川実花展 Eternity in a Moment 瞬きの中の永遠」と題した展覧会が2024年2月25日まで開催されている。
手がけたのは蜷川、データサイエンティストの宮田裕章、セットデザイナーのEnzoらからなるクリエイティブチーム「EiM」だ。エグゼクティブディレクターを宮田が務めた。
衝撃的な出会い
「長年モノを作り続けてきましたが、ずっとどこかに『孤独だな』という思いはあったんです」
そう蜷川は言う。
「もちろん、普段からたくさんのスタッフの助けを借りながら作品をつくっていますが、私がやりたいことをサポートしてもらう感じでした。でも、自分が中心となり取り組むことの限界を感じていたときに、宮田さんが私自身も気づいていなかった視点を拾い上げ、手に触れる形にしてくださった。創作の第一歩からともにすることができる人が現れたというのは、自分にとって衝撃的なことでもありました」
宮田も大きく頷く。
「それぞれの場所で色々な経験を重ねてきた二人が組んだこともないチームを組む。それは若き少年の頃の組み方とは違うものであり、純粋に面白いな、と感じましたね」
宮田自身、日常のなかで多くの写真を撮ってはインスタなどに上げてきた。撮り方一つとっても「こんな切り取り方があるのか」と異なる視点の持ち方に驚かされたり、逆に「非常に似たところがあるな」と感じたり。