後藤正文さん。ASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカル&ギターを担当。Gotch名義でソロ音源も発表している(写真:鈴木成一デザイン室)
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書籍『朝からロック』を上梓した後藤正文へのロングインタビュー後編をお届けする。(前編はこちら

【写真】後藤正文さんらが参加したセカンドアルバム『PURSUE』をリリースした「のん」

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――本に収められたエッセー「音楽と政治」(「良い音楽家は奏でる前に、聴く〈ロッカーの章〉」)では映画「アメリカン・ユートピア」(デヴィッド・バーンのブロードウェーの舞台を記録した映画/スパイク・リー監督)を取り上げ、「音楽的な魅力が社会的なイシューと切り離されていないところにも感銘を受けた」と評価しています。アートと社会的なメッセージのバランスも重要な問題ですよね。

とても大事な視点だと思います。「アメリカン・ユートピア」に関しては、デヴィッド・バーンが何も損なわず、言いたいことを明確に言っているように感じたし、すごくカッコいい大人だと思ったんですよね。音楽もすごくいいんですけれど、「よかった」では終わらない何かがあるし、映画を観た人にいろいろな気持ちを持ち帰らせる作品だなと。エンディングでデヴィッド・バーンが自転車に乗って劇場を出るんですけど、そこにもメッセージが感じられて。ただ、音源(アルバム「アメリカン・ユートピア」)の段階では「女性アーティストとのコラボレーションがまったくない」という批判もあったんです。映画が公開されたときも「アジア系のミュージシャンが参加していないのはなぜか」という意見があったし、社会的な課題はどんなところにも存在しているんですよね。それを受けて、また新しい作品につながるんじゃないかなと。

――後藤さん自身の作品においても、社会的なイシューは意識していますよね?

作品によりますけど、ポップミュージックのなかでもやれることはたくさんあると思っています。ただ、全員が同じことをやる必要はないと思っていて。一つの楽曲に対して「この曲の社会性は……」みたいなことを問われるのはいいことだと思うんですけど、大雑把に「ミュージシャンは全員、社会にコミットした作品を作るべきだ」というのは暴論なので。「表現はどうあるべきか?」みたいなことをよく聞かれるんですけど、僕はシンプルに「みんな勝手にやれよ」としか思ってなくて。みんなが好き勝手にやって、そのなかで思ったことを言えばいいだけの話だし、何を作るかはその人の自由なので。

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森朋之

森朋之

森朋之(もり・ともゆき)/音楽ライター。1990年代の終わりからライターとして活動をはじめ、延べ5000組以上のアーティストのインタビューを担当。ロックバンド、シンガーソングライターからアニソンまで、日本のポピュラーミュージック全般が守備範囲。主な寄稿先に、音楽ナタリー、リアルサウンド、オリコンなど。

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