■取り扱いや保管しやすいコイン
石山さんが店長をするゴールドコイン(東京都稲城市)では、顧客のほとんどが売らないという。買って、亡くなるまで保有し、遺産となる。「欧米のオークションで、亡くなった人の名前がついたコレクションが売りに出てくることがある」と石山さんは話す。素性が明らかで、普段は市場に出てこないものなので、「みんなで争奪戦」となり、値段が上がるという。
美術品などと違い、アンティークコインは取り扱いや保管がしやすいため、コレクション対象として魅力的だ。一方、オークションではすぐに売れず、換金性の問題もある。個人コレクターだけの世界で、金融機関や大手企業が入ってこないのも特徴という。
オークションに出すには、2カ月くらい前に出品する必要がある。落札されても、売り手にお金が支払われるまで時間がかかり、出品から換金まで4カ月くらいかかるという。その間、出品したコインは預けたままになり、“ロック状態”になる。
コインの価値は、「まずは大きさ」と石山さんは指摘し、大型であるほど値段が高くなる。国王の姿があるのも大事で、美しいものは高額になりがち。英国ヴィクトリア女王の1837年の即位を記念して、その当時に400枚だけ発行されたとされるのが「ウナライオン」と呼ばれる5ポンド金貨。石山さんは「ベンチマーク的な有名なコインで、若い女王の姿があり、世界で一番美しいとされる」と話す。
このウナライオンは2013年に700万円くらいだったが、いまは3千万円くらいするという。それでも、石山さんは「4倍は上がったうちに入らない。5~6倍の値上がりが普通」と話す。
どんな人がアンティークコインを買っているのだろうか。石山さんは、ビジネスをしている人や医者が多いという。9割は男性で、若くて40代と年齢は高め。「医者は仕事が忙しいため、株は価格が上下しやすく、ずっと見ていられない。投資対象は不動産かコインとなるが、不動産は現物を見に行かないといけない」(石山さん)。忙しく働き、稼いでいる人には、現物に投資するのにアンティークコインがちょうどいいのかもしれない。
株などの金融投資と違って、コレクション投資の魅力は、見て、使って楽しめること。前出の大城さんは「オタクの延長線上」と話す。収集家は「こんなものを買った」とか、「こんなものを持っている」とか言いたくなりがちで、「見せて楽しんでいる」とも話す。その収集品が値上がりするかは、希少性や人気、保存状態次第という。(本誌・浅井秀樹)
※週刊朝日 2023年4月7日号