「現在の番組がスタートした際、リスナーの方から『待ってました!』という声が多く寄せられ、演歌・歌謡曲の人気の根強さを実感しました。ゲストの歌手のみなさんにも感謝され、今の世の中にも演歌・歌謡曲は求められているという確かな手ごたえがあります」
番組をきっかけに、若い世代のリスナーから「こんなに良い曲があったんだ」という発見の声も寄せられるという。
「番組のコンセプトのひとつがまさに、若い世代にも演歌・歌謡曲の良さを知ってもらいたいということ。触れるきっかけがあれば響くんだな、と感じています。演歌・歌謡曲の持つメロディーには、きっと日本人が生まれながらに持っている情緒のようなものが流れているのでしょう。そこに響くような番組づくり、選曲で届けることが、私たちラジオのパーソナリティーの使命でもあると思っています」
前出のヨーロー堂のイベントにも、20~30代の熱いファンの女性が姿を見せるなど、以前よりも若い層に人気が拡大していることが見てとれるという。前出の吉野さんが手がける歌手たちも、CDにボイスダウンロードができる特典をつけるなど、若い世代を意識したサービスを提供している。
こうなると、従来の高い年齢層の演歌・歌謡曲ファンが順応できるのかが心配になってくるが、前出の小林さんは、番組やイベントなどでの経験からこう語る。
「そこは、みなさん、時代についていくんです。たとえばツイキャスやインスタライブなどの最新のツールも、好きな歌手が配信していると、勉強して使い方を覚え、楽しまれています。イベントで歌手と触れ合う時のうれしそうな様子を見ると、みなさん、10代、20代の心に戻るんだな、と思います」
演歌第7世代の新浜レオンが歌ったテレビアニメ「名探偵コナン 犯人の犯沢さん」の主題歌がTikTokなどの「踊ってみた」動画で人気を集めるなど、すでに従来の演歌の枠を超えた楽しまれ方が広まりつつある。
こうした変化に、昔ながらの演歌がなくなってしまうのか、と寂しさを覚える人もいるかもしれない。だが、そもそも私たちのイメージする演歌は、1960年代に古賀政男が作り上げた「古賀メロディー」などの流れをくむと言われ、村田英雄や三橋美智也、春日八郎、三波春夫、そして美空ひばりといった人気歌手の活躍により国民に愛されるようになった経緯がある。これら昭和中期の演歌も「流行歌」の中のひとつのジャンルだったと考えると、時代に合わせた新しい演歌のスタイルが誕生するのもごく自然なことに思えてくる。
23年以後の演歌界には、はたしてどんな変化が起きていくのだろうか。(本誌・太田サトル)
※週刊朝日 2023年1月6-13日合併号