「元戦隊もの出身の中年アイドルがスーパー銭湯で活動していたことに着目、“スーパー銭湯アイドル”というキャッチがメディアで取り上げられたことで話題につながりました。演歌の世界はみんな、歌がうまくて当たり前。そこにキャラクター性がある人が出てくることで、従来のファン層以外にも広がっていく。そういう売り出し方も求められています」(吉野さん)
吉野さんが現在売り出し中の二見颯一も、絵のうまさを生かし、絵を描きながら歌う「デッサン演歌」歌手として、テレビのバラエティー番組などで注目を集めている。
もちろん“キャラ”だけなく、曲調にも流行の変化はみられる。前出の富澤さんは、「昔ながらの、いわゆる“ド演歌”ではないものが主流です」と言い、こう解説する。
「私は『エイジフリーミュージック』と呼んでいるのですが、ド演歌とJ-POPの要素を併せ持ちながら、どちらともまた違う新しい歌謡曲が生まれ、世代を問わず響くようになってきています。ド演歌にも抵抗があり、かつボカロ曲などの最新のJ-POPやヒップホップにもついていけない層にとって、耳なじみの良い曲調のもの。それらに触れることで、あ、演歌もけっこういいなと好きになっていくということはあると思います」
富澤さんが考える「エイジフリーミュージック」の理想形の一つが、坂本冬美のヒット曲「また君に恋してる」だ。
「フォークシンガーを代表するビリー・バンバンの曲を、女性演歌の代表である坂本冬美が歌い、CMや歌番組で多くの層に人気を得ました。こういったヒット曲がどんどん出てくることが一番ですね」
ところで、変わってきたのは歌う側だけではない。演歌・歌謡曲のファン層にも、近年大きな変化がみられるという。
高い年齢層でも最新ツール利用
演歌・歌謡曲を中心にした選曲で深夜3時から生放送されていたラジオ番組「走れ!歌謡曲」(文化放送)は、21年3月に惜しまれながら終了した。現在、同じ枠でそのDNAを継ぐかたちで放送されているのが「ヴァイナル・ミュージック~for. EK~大人の歌謡クラブ」だ。新旧両番組でパーソナリティーをつとめるフリーアナウンサーの小林奈々絵さんはこう語る。