●女性をやる気にする伝え方 その4「身だしなみに気をつける」

 男性同士だと気にならないかもしれませんが、女性は男性の身だしなみを見ています。同じ「ボールをよく見て!」と言われたとしても、鼻毛が出ているとボールよりも鼻毛のほうが気になって、見てしまうもの。説得力も出ません。ノンバーバルコミュニケーションとも言われますが、同じ内容のことを伝えるにしても、身だしなみに気をつけている男性のほうが、圧倒的に説得力があるのです。

 実際、佐々木監督は「家を出る前には必ずかがみの前で立ち止まり、鼻毛、寝ぐせ、シャツの染みやシワなどを確認するようになり、ごく自然な香りのするコロンをつけ、歯も頻繁に磨いて口の中の清潔さにも気を配るようになった」と言います。※自著『なでしこ力』より

●女性をやる気にする伝え方 その5「ひいきしない」

 男子サッカーでは、たいてい監督のお気に入りの選手がいて、それをメディアでも公言したりもします。一方で佐々木監督はそういうことを一切しません。女性は男性よりも、ひいきに非常に敏感です。重要な選手だから、とかわいがると他の選手から「なんで、あの子だけ?」と不満が爆発します。

 澤選手がアルガルベカップ2015の代表メンバーから選外となったとき、会見で問われて

「一人の選手についてコメントするのはフェアではないので、ここでは控えさせて頂きたい」

 と答えます。こちらは澤選手への配慮だけではありません。他の選手に対しても、「フェアに扱っているよ」というメッセージとなっているのです。

●女性をやる気にする伝え方 その6「認めたい欲」で伝える

「おまえたち手を抜いているだろう」

 監督をしていると、そう思う瞬間もあるでしょう。ですが佐々木監督はこう伝えています。

「もっとできる」「もっと伸ばせる」

 実は、伝えたい内容は同じです。ですが「おまえたち手を抜いているだろう」と言われると昔のスポ根時代は、それを恥じてがんばるということもあったでしょう。ですが現代の女性は、違います。逆にやる気をなくしてしまう人もいるかもしれません。一方で「もっとできる」と、可能性を言ってあげるとやる気を出しやすいのです。
 こちらは、伝え方の技術である「認められたい欲」です。

 スポーツだけなくビジネスの現場でも、上に立つ人たちからすると「部下が手を抜いているな」と思うことはあると思います。ですがそれをストレートにそのまま言うと、かえって逆効果。彼女たちが自分から「がんばろう!」と思えるように伝えてあげるのです。

 コミュニケーションの基本は、「相手のことをどれだけ考えて、話ができるか」です。女性に気持ちよく仕事してもらうためのコミュニケーション方法。それは、はじめに紹介した佐々木監督の

「女性をうまく扱うことはできないが、女性の意見に耳を傾けて、自分を変えることぐらいならできる」

 こちらにつきます。『伝え方が9割(2)』に詳しく書かれてありますが、自分の言いたいことをストレートに言えば、それで女性が言うとおりに行動してくれるわけではないのです。女性が気持ちよくそうしたくなるように、自分を変える。伝え方を変える。

 これぞ、なでしこを2度連続で決勝戦まで連れて行った、監督のコミュニケーションの秘密でした。

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