惜しくも、準優勝でしたが、2大会連続決勝進出。これだけの成果を出したのは、佐々木則夫監督が、知見や戦略が超一流だったから、だけではありません。
選手である、なでしこたちが「がんばろう!」「この人についていこう!」と思う、そんなコミュニケーションをしていたからです。そのコミュニケーションは、サッカーだけでなく、女性の部下を持つビジネスパーソンにも応用がききます。女性たちが、やる気になるコミュニケーション術を佐々木監督から学んでみましょう。
●女性をやる気にする伝え方 その1「話を最後まで聞く」
佐々木監督はこう言っています。
「女性をうまく扱うことはできないが、女性の意見に耳を傾けて、自分を変えることぐらいならできる」
佐々木監督は、自分自身の言いたいことがあったとしても、話しを途中でさえぎって自分の主張はしないと言います。澤選手が「練習量が多すぎて、みんな疲労がたまって試合では動けなかった」と相談をもちかけたとき。違う考えを持っていた佐々木監督は、話を最後まで聞き、いちど受け止めた上で自分の意見を伝えています。
女性は、「自分の話しを最後まで聞いてほしい」という気持ちが男性以上に、強くあります。途中で「いや、そうじゃなくて」と遮られて話されると、結果として相手が正しかったとしても、素直に納得しにくいのです。
●女性をやる気にする伝え方 その2「論理だけでなく感情も」
「びっくりするようなミドルを」
決勝トーナメントのオランダ戦に向け、阪口夢穂(みずほ)選手に対して言ったコトバ。男性の選手に対してなら、もっと戦略的な伝え方だけでいいもの。ですが、佐々木監督はあえてこういう感情をあおるような伝え方をしています。
「君が決めて勝つんだ!」
準々決勝のオーストラリア戦にて。佐々木監督はこう言って、岩渕真奈選手を送り出しました。これも、これからピッチに入る選手にとって、感情をゆさぶる伝え方です。練習はたくさんしてきました。だから、論理的なコトバよりもよっぽど彼女は燃えたのではないでしょうか。そして、彼女は決勝弾を放つことになります。
男性は、「論理」に筋が通っていれば、それで納得できるもの。ですが女性は論理だけでなく「感情」に訴えることでより力を発揮することができます。ただ正しいことを、正しく伝えるだけでなく、女性の気持ちが高まるような、いい意味で感情的なコトバを佐々木監督は使っているのです。
●女性をやる気にする伝え方 その3「横から目線」
選手たちから佐々木則夫監督は何と呼ばれているか知っていますか?
「ノリちゃん」
一部の代表選手からは
「ノリオ!」
と呼び捨てされているのです。監督という、組織を統率する立場の人で選手からそう呼ばれる人はいないのではないでしょうか。これはもちろんナメられているわけではありません。佐々木監督がそれを容認しているどころか、そう呼ばれるようにしているからです。監督と選手という「主従関係」ではなく、もっと「近い仲間」という視点でコミュニケーションをしていることの現れです。佐々木監督は「僕はチームのボスではなく、選手たちの兄貴分、あるいは父親役」と言っています。
一方で、澤穂希選手は「今までの監督で、一番選手に近いところで話してくれる監督」とも言っています。