スマートフォンなどのデジタルデバイスの普及によって、SNSやゲームに依存してしまう子どもが増えています。長時間のデバイス利用で睡眠のリズムが乱れ、朝、学校に行けずに不登校になるケースも。そうした子どもの睡眠障害の対処法や治療法について、専門の医師に聞きました。この記事は、週刊朝日ムック「手術数でわかるいい病院」編集チームが取材する連載企画「名医に聞く 病気の予防と治し方」からお届けします。「睡眠障害」全3回の1回目です。
【図版】学童の正しい生活と睡眠リズムはこちら(内村直尚医師監修)
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わたしたち人間にとって大切な睡眠。とくに子どもにとっては、心身の成長や発達のためにも十分な睡眠が不可欠です。しかし、日本の子どもたちの睡眠時間は世界的にも短く、必要な睡眠がとれていないとされています。なぜなのでしょうか。日本睡眠学会と、2023年に新設の日本睡眠協会、両方の理事長を務める久留米大学学長の内村直尚医師はこう分析します。
「幼い子どもは夜8時ごろまでにかならず就寝させる海外とは異なり、3歳児でも夜10時以降まで起きている子が多いのは日本の特徴です。夜遅くまで子どもを外に連れ出すことに問題意識をもたない大人が多い。そうした文化的背景が幼い子どもの睡眠不足のひとつの原因にもなっています」
必要な睡眠時間は、新生児で約14時間、幼児(1~2歳)では11~14時間、学童(6~13歳)は9~11時間、15歳前後では約8~9時間とされています。睡眠時間がこの時間を下まわると、成長や発達の阻害に影響するとされています。
「現在、小学校に上がる子どもの約10%が発達障害とされていますが、実際には睡眠不足が原因で似たような症状が出ているケースも一定数あると考えられています。睡眠不足は不登校やひきこもりだけでなく、将来的なうつ病の発症や自殺リスクなどの問題にも影響する可能性もあります」(内村医師)
小学生未満は家族ぐるみで睡眠のリズムを整える
小学生未満の子どもの睡眠問題は親の睡眠環境とリンクしていると内村医師。