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 それなのに旅館の玄関で、「ないー」「ないー」と口をとがらる。富田さん、不満そうな表情が二つしかない。口を縦型にあけたままか、眉間を寄せたへの字か。そういう芝居をさせられているのかなー、それにしても何か違うなー。富田さんが気の毒にさえ思えてくる。

 で、小夜劇場の真っ最中に旅館に現れたのが、スズ子のファンで楽屋に来たものの恥ずかしがって引き上げた学生(水上恒司)だ。

 あ、おめーだな。おめえ、あとつけてきたのけ。さっきから怪しいな、おれの銭、盗ったっぺ、とまくしたてる。学生が「な、なんですか」と反応すると、「その慌て方、怪しいな」とエスカレートしていく。

 笠置シヅ子吉本興業の御曹司と恋仲になる。割と有名な話だから、この小夜劇場はそこへの第一歩だとわかりつつ見る。それにしても「自然な展開」とは程遠い。学生と人気歌手の恋愛は、視聴者ににわかに信じてもらえない。制作サイドがそう判断しているのだろうか。スズ子本人も周囲も何度も口にする「十も年下」だからなおさらで、だったらぶっ飛んだ展開にしよう、と?

 それも違う気がする。スズ子は学生(その日に夕飯を共にして「愛助」とわかるのだが)を初めて見た瞬間、六郎と重ねていた。愛助がスズ子を高く評価する筋金入りのファンだったことも、夕飯での会話で明らかになる。しかも、六郎はとても優しいし、いいヤツなのだ。それなのに、なぜ小夜劇場? わからない。

 さらにわからないのが、出会いの翌日。かなりてんこ盛りというか、強引というか、これまでの「ブギウギ」にはない展開だったのだ。

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いやいやいや。足袋、脱ぐでしょ。