尾見紀佐子(おみ・きさこ)/1970年生まれ、静岡県出身。東京都渋谷区で「かぞくのアトリエ」「代官山ティーンズ・クリエイティブ」「景丘の家」を運営(撮影/写真映像部・上田泰世)

 体力面での衰えは出てくるものの、新たなチャレンジもまだ可能な50代。より良く生きるためには、どんなことを心がければいいのか。マザーディクショナリー代表・尾見紀佐子さんに聞いた。AERA 2023年12月18日号より。

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 ファッション関連の学校を出て、20歳で結婚しました。3人の子どもが生まれ、20代は専業主婦として子育てに没頭。30代で少しずつ仕事ができるようになった時は嬉しかったですね。新しい時代の母たちへ向けたフリーペーパーやイベントを企画する「mother dictionary」を担当し、充実していました。

 でも、本当に忙しくて。仕事をしながら、頭の中では晩御飯の献立や子どもたちの予定を考えて、お迎えの時間になると走る毎日。30代後半で身体を壊し、限界を感じて、40歳になる頃に離婚。そして、起業しました。不安だらけでしたが、勇気をふり絞って踏み出しました。

 子どもたちと新たな暮らしを始めてすぐ、東京都渋谷区のこども・親子支援センター「かぞくのアトリエ」の運営依頼を受けました。都会での子育てに必要な居場所を創る仕事で、自分の経験を全て生かすことができる。生きる目的が見えたような気がしました。人、モノ、コト。余白ができれば、そこに新たな風が吹くことも実感しました。

 いま、仕事は多岐にわたります。文化を伝える取り組みとしてのアーティストマネジメントやイベントのプロデュース、こども食堂やフードパントリーなどの社会貢献活動など、情熱を持って取り組んでいます。

 50代になり、更年期や家族のことなど、年齢と向き合わざるを得ない瞬間が増えてきました。「終活」はまだ始めていませんが、自分と向き合い、心の栄養ストックをたくさん貯めておきたいです。これからの人生を自分らしく自由に楽しく生きていくために大切なことだと思います。(編集部・古田真梨子)

AERA 2023年12月18日号

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古田真梨子

古田真梨子

AERA記者。朝日新聞社入社後、福島→横浜→東京社会部→週刊朝日編集部を経て現職。 途中、休職して南インド・ベンガル―ルに渡り、家族とともに3年半を過ごしました。 京都出身。中高保健体育教員免許。2児の子育て中。

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