DJブースのオーナーの北島さん。「今宵も死ぬ前のダンスを見せてください」の掛け声にホールは盛り上がる(撮影/羽根田真智)

 東京・鶯谷の「ディスコ」が大盛況だという。ミラーボールが回るダンスフロアでリズミカルに踊るのは、人生のベテラン感のある男女たち。いったい、何が起こっているのか。

【写真】スパンコール付きのゴージャスなディスコ衣装。社交ダンスの達人のとっておきだ

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「今宵の勝負服」で参戦

 ミラーボールが回るダンスフロア。音楽に合わせてリズムを刻んでいるのは、ミニスカート、ジージャン、革パンツ、ジャージーなどなど、思い思いの“今宵の勝負服”に身を包んだ、人生のベテラン感のある男女だ。

 と、ムーディーなイントロが流れ出した。クック・ニック&チャッキーが1972年にリリースした「可愛いいひとよ」(作詞は阿久悠、作曲は大野克夫)だ! 人々は一斉に同じステップを踏み出した。笑顔で、時に視線を絡ませながら、同じ音楽に合わせて同じ振り付けで踊る。この一体感を経験したら、「あぁ、また味わいたい」となるに違いない。

 ここは、「歌謡曲カフェLover’s」。中高年が集まるディスコだ。高輪ゲートウェイ駅が開業するまで、JR山手線で1日の平均乗車人員が最も少なかった駅、鶯谷の南口から徒歩数分のところにある。

店内には昭和を感じさせるさまざまなグッズが展示(撮影/羽根田真智)

踊りまくる男女たち

 筆者が訪れたある日曜日、外はまだ明るい16時過ぎだったが、ダンスフロアは、すでに2時間踊りまくる男女で立錐の余地もない盛況ぶりだった。

「平日はDJがいるカラオケスナックで、ディスコ営業は土曜日が18時から24時まで、日曜日は14時から19時まで。お客さんの中心は50〜60代で、上は70代までいますね。僕なんか時々冗談で、『さぁ、今宵も死ぬ前のダンスを見せてください』なんてDJブースで言うんですよ」

 そう笑うのは、この店のオーナー、北島慶一さん。1957年生まれだという。15年ほど前に、前の経営者から店を引き継いだ。

「『可愛いいひとよ』は40年くらい前、白金の「ダンステリア」で掛かっていてね。その後何度もカバーされ、リバイバルで流行って、インチキっぽい踊りがあちこちで出てきた。僕はそんなのカッコ悪いと思っていたんです」

 説明しよう。白金の「ダンステリア」は2011年に惜しまれつつも27年の歴史に幕を下ろしたディスコで、ソウルミュージック&ダンスの聖地といわれた場所。DJを務めていたニック岡井さん(故人)は、前出のクック・ニック&チャッキーのメンバーで、ソウルステップの神様的存在だ。

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