東京福祉会の「聖恩山霊園(納骨堂)」の外観

 都市部で無縁遺骨が増加している。背景には少子高齢化と多死社会の到来がある。身寄りのない高齢者への支援が急務だ。AERA 2023年12月18日号より。

【写真】この記事の写真をもっと見る

*  *  *

 少子高齢化が進み、地縁と血縁が薄れる中、都市部では引き取り手のない「無縁遺骨」が増加している。

 2022年冬、東京都豊島区の住宅街にある一戸建てに1人で住む70代の男性が、孤独死した。警察から連絡を受けた同区は、戸籍を調べたが、独身で子どもはおらず、親族は他界。遺体を引き取る人がいなかったため、葬儀業者に依頼し、火葬した。遺骨となり、骨つぼに納まった男性は、無縁遺骨として区が今、保管している。

 その後、区が男性の遺留金を調べたところ、銀行口座には数百万円の預金、さらには自宅の土地や建物も男性名義で、借金はなく、数千万円の資産価値があるとわかった。

 相続財産清算人を選任し、男性の不動産などを処分し、その中から区が立て替えた火葬費など実費を清算すると、男性が残した預金と土地と建物の売却金数千万円は国庫に入る。

身元わかっても無縁

 総務省が今春、発表した調査(2018年4月から21年10月まで)によると、この男性のように死亡時、遺体の引き取り手がなかった死者の数は、約10万6千人、残された遺留金は約21億5千万円にものぼる。

 そして火葬後も引き取り手がなく、市区町村が保管している無縁遺骨は全国で少なくとも6万柱。その内訳を見ると「行旅死亡人」と呼ばれる身元不明者はわずかで9割は身元がわかっている。「全自治体の状況を把握できたわけではないので実際はもっとある」(総務省担当)という。

 こうした遺骨は市区町村営の斎場や委託した納骨堂、役所の倉庫やキャビネットなどに1~5年間ほど保管され、引き取り手が現れるのを待つ。

 2018~22年度で引き取り手のない遺骨約7500柱が保管されている東京都練馬区にある聖恩山霊園の納骨堂──。

 都内で最大の無縁遺骨の保管場所だ。

 同霊園や江古田斎場などを運営する社会福祉法人「東京福祉会」によると、こうした無縁遺骨は納骨堂の下段などに納められ、5年間保管される。

次のページ