一年間のうち最も窒息による死亡者が増えるのは1月1日から3日に集中しており、正月にモチをのどに詰まらせたことが主な原因である。毎年正月に起こる窒息事故の正しい応急処置法、やってはいけないNG例を救命救急医に聞く。
【イラスト】ガイドラインで推奨の「背部叩打」、「腹部突き上げ法」はこちら(全2枚)
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高齢化が進む日本では、窒息による死亡事故が相次いで起こる。特に正月にモチなどをのどに詰まらせて救急搬送される事故の大半が、65歳以上の高齢者だ。高齢になると、歯のトラブルやのどの筋力が衰え、かむ力や嚥下(えんげ、のみ込む力)が低下したり、咳(せき)がうまく出せなかったりすることが多い。特にモチは粘弾性が高く、詰まりやすい性質であることも関係している。
本来、食べ物は食道に入るはずが、のみ込みに失敗して気道を塞いでしまうことが、いわゆる窒息であり、注意が必要だ。
日本医科大学付属病院 高度救命救急センター講師の五十嵐豊医師によると、その後の運命を左右するボーダーラインは「5分」。モチが詰まってから取り除くまでに5分以上経過すると、意識が戻らないなどの後遺症や、最悪の場合は死に至る可能性が格段に高まるという。
だが、2021年の救急車の現場到着所要時間は全国平均で約9.4分。さらに到着してから応急処置を開始するまでの時間を含めるとそれ以上になる。そのため、「周囲の行動がその人の生死や後遺症に大きな影響を与える」と五十嵐医師は言う。まさに責任重大だ。
モチをのどに詰まらせた場合の正しい応急手当
いざという時に慌てないために、近くに窒息が疑われる人がいた場合の応急手当について確認しておこう。
【モチによる窒息が疑われる人に対してとるべき行動手順】
- 苦しそうにしている、のどを押さえているなど、窒息のサインに気づく
- 声を出せるか確認し、意識があれば咳をさせる
- 周囲で助けてくれる人を集め、救急車を呼ぶ
- 背部叩打(こうだ)(左右の肩甲骨の中間を強くたたく)を試す
- 腹部突き上げ法(背後から腹部を圧迫する)を試す
- ④と⑤を救急車が来るまで何度も続ける
- 反応がなくなったら胸骨圧迫(心臓マッサージ)を行う