己の戦い方を問い続けるしのぶ
小柄できゃしゃな自分の体格の弱点を十分に自覚しつつ、苦悩の果てにしのぶが選んだ方法は、しのぶにとっても、カナヲにとっても“極めて残酷な”選択だった。毒を使う「蟲柱」としての戦い方――この作戦の成功のために、しのぶは柱稽古には参加せずに、自分ひとりで厳しい条件を整える。
「力が弱くても 鬼の頸が斬れなくても 鬼を一体倒せば何十人 倒すのが上弦だったら 何百人もの人を助けられる できる できないじゃない やらなきゃならないことがある」(胡蝶しのぶ/17巻・第143話「怒り」)
しのぶの意志は固く、それを告げられたカナヲも止めることができなかった。
最終決戦を前にしたこの局面で、あれほどの強さを誇りながらも、義勇としのぶは「自分の才」に疑問を持っており、柱稽古編では2人の“弱音”も語られる。しかし、2人がこの訓練に参加しようとしなかったのは、単純に「自分のマイナス要素」にとらわれていたからではない。
義勇には炭治郎という弟弟子が、しのぶには継子のカナヲがいた。彼らは師弟関係のようでありながら、同時に「命の恩人」として面倒を見ていた。弱かった炭治郎、親に売られたカナヲを守ったのは、義勇としのぶの慈愛によるものだ。
そして、ストーリー上、示唆的であるのは、カナヲが使用しているのはしのぶの「蟲の呼吸」ではなく、しのぶの姉・カナエの「花の呼吸」であることだ。さらに炭治郎は義勇と同じ「水の呼吸」から「ヒノカミカグラ」の使い手へとなっている。
若い剣士たちの大いなる成長が、義勇としのぶの考えに変化をもたらす。柱稽古編では「守り・守られる関係」からの転換期も描かれる。