胡蝶しのぶ(左)と冨岡義勇。「柱稽古編」のティザービジュアルより(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

アニメ『鬼滅の刃』の新シリーズ「柱稽古編」の放送が2024年春から始まると発表された。鬼殺隊の中でも最強の剣士と称される「柱」たちが一堂に会することはほぼなく、炎柱・煉獄と音柱・宇髄以外の全員がそろうのは、「立志編」以降はじめてのことである。しかし、柱稽古という大切な訓練に、水柱・冨岡義勇と蟲柱・胡蝶しのぶは参加しようとしない。一体なぜか。その背景には、彼らが背負う特殊な事情と、2人に共通する苦悩があった。

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【※ネタバレ注意】以下の内容には、既刊のコミックスのネタバレが含まれます。

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紛糾する緊急柱合会議

 久々に「柱(はしら)」たちが産屋敷邸に集結する。これはアニメ新シリーズで期待される見どころのひとつだ。前回は鬼の禰豆子(ねずこ)を連れた炭治郎に対し、柱たちから口々に厳しい言葉が飛び交ったが、今度の会議では、柱たちの機嫌は決して悪くない。刀鍛冶の里で「上弦の鬼」(※鬼の中の上位実力者)が2体も出現したにもかかわらず、参戦した炭治郎と禰豆子、不死川玄弥(しなずがわ・げんや)、霞柱・時透無一郎(ときとう・むいちろう)、恋柱・甘露寺蜜璃(かんろじ・みつり)らが五体満足で生還したためだろうか。いつもは怒りっぽい風柱・不死川実弥(さねみ)すらも、彼らと上弦との遭遇話に「あーあァ 羨ましいことだぜぇ」と軽口をたたくほどだった。

 しかし、比較的和やかに始まったこの会議も、特定の剣士だけに発現する「ある現象」の深刻さと、水柱・冨岡義勇(とみおか・ぎゆう)の言動によって、場の空気が一転してしまう。重要な会議にもかかわらず、義勇は「俺には関係ない」と中座しようとし、実弥が「待ちやがれェ!!」と怒鳴りつける一幕があった。

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植朗子

植朗子

伝承文学研究者。神戸大学国際文化学研究推進インスティテュート学術研究員。1977年和歌山県生まれ。神戸大学大学院国際文化学研究科博士課程修了。博士(学術)。著書に『鬼滅夜話』(扶桑社)、『キャラクターたちの運命論』(平凡社新書)、共著に『はじまりが見える世界の神話』(創元社)など。

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「俺は水柱じゃない」